■ADMIN■
ADMIN ID:
ADMIN PW:
■CATEGORIES■
■POWERED BY■
BLOGN(ぶろぐん)
BLOGNPLUS(ぶろぐん+)
■OTHER■

『肉体女優殺し 五人の犯罪者』
『肉体女優殺し 五人の犯罪者』(1957年・S32)

ロック座で殺人事件――。何者かがすり替えた新聞の予告広告通り、踊り子の千鳥(北令子)が舞台上で射殺された。ベティ(三原葉子)が撃った小道具のピストルが本物にすりかえられていたのだ。なさぬ仲だった千鳥の夫の徳島(大江満彦)が逮捕されるが、兄の無実を信じる妹・かほる(三ツ矢歌子)の懇願に、新聞記者の西村(宇津井健)は一肌脱ぐことを決意する。

千鳥が麻薬常習者だったことから、ヤク絡みの事件ではないかと見当をつける西村。ところが、鍵を握っていそうなベティが舞台から転落死してしまい、ロック座にヤクを流していた船上便利屋の森元(御木本伸介)も水死体で見つかった。

そんな中、殺人現場や西村の行く先々に胡散臭くうろちょろする黒ぶち眼鏡の貧相な男がいた。ロック座の振付師・天野(天知茂)である。かほるに偏執的かつ変質的なダンス・レッスン(「ワン・ツー・スリー・フォー!ダウン・アップ・ダウン・アップ!ほら、もっと回した回した! フラフラしない!(延々と続く)」)を施して当然のごとくフラフラしたところを押し倒す(が、フラフラのかほるに一旦押し戻されかけるあたりの華奢さも見逃せない)この天野、ヒーロー然と現れた西村に「君はどこかが狂っている。これ以上自分で自分の運命を狂わせないほうが賢明だ」とヒーロー然とした説教(どこかどころじゃない狂い方ですが西村さん)をパンチと共に喰らっても「狂ってんのは今の世の中さ。俺が知ったことじゃない」とニヒルに言い放つ大型悪人ぶりを見せつけるほか、いかにも怪しい奴でございな言動と悪人笑顔(画像参照)を撒き散らして期待させてくれるのだが、クライマックス間近で再びかほるちゃんを襲っているところをラスボス・関根(林寛)に撃たれてしまい、未練たっぷりに悶えながらもあえなく絶命。結局、ちょっと変態気味のパシリでしかなかったらしい。

*聞きしに勝る「ワン・ツー!」のインパクトだった。

*「犯罪者5人」って誰だろう。ラスボスの関根、パシリの天野と道化のハチノキ(小倉繁)、ベティ姐さん、森元?(ベティ姐さんは「肉体女優」も兼ねてる?)

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=121 |
| 映画::新東宝 | 11:08 PM | comments (x) | trackback (x) |
『明治大帝御一代記』
『明治大帝御一代記』(1964年・S39)
*正しくは「大蔵映画」ですが、新東宝カテゴリに入れています

かつて新東宝が製作した『明治天皇と日露大戦争』、『天皇・皇后と日清戦争』そして『明治大帝と乃木将軍』を再編集し、1本の映画にして公開した作品。

前2作には出演している天っちゃんだが、『明治天皇…』冒頭のモミアゲ代議士は本筋に関係ないからかばっさりカット、そのかわり『天皇・皇后…』でのモミアゲ狙撃犯・小山の活躍(ハタ迷惑な暗躍)ぶりはノーカットで使われていた。でもそれだけなので、わざわざこのダイジェスト版を見る意味は(天知ファン的には)あまりない。

*DVDには嵐寛寿郎・若山富三郎・高島忠夫のプロフィールつき(アラカンさんはともかく、どういう基準のチョイスなのかいまいち不明)。ただジャケットには、アラカン・宇津井・天知の順でクレジット表記されていた(これもどういう基準なのか)。

*正規品なのに、こういうウッカリがあると胡散臭さ倍増である

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=120 |
| 映画::新東宝 | 11:07 PM | comments (x) | trackback (x) |
『女王蜂と大学の竜』
『女王蜂と大学の竜』(1960年・S35)

三国人連盟の横暴からマーケットを守る関東桜組。ドンパチを好まず、清く正しい任侠道をゆく組長の千之助(嵐寛寿郎)とそのグラマー娘・珠美(三原葉子)だが、連盟の呉(大友純)やショバを狙う土橋(近衛敏明)のいやがらせはヒートアップする一方。そこへ現れ窮地を救ってくれたのが、ラバウル帰りの元特攻、頭が切れる(らしい)ので“大学”との仇名を持つ大学の竜こと広岡竜二(吉田輝雄)。しかし、桜組の幹部・達(沖竜次)が土橋サイドに内通していたことから事態はどんどん悪い方向に。果たして珠美は組を守れるのか!?

さて、クレジットは両サイドに余裕のある好位置につけていながらgooのあらすじにも名前が出てこない駒形金竜(天知茂)は、アラカン組長に付き従って和服姿で登場するそのスジの人。よく見ると右頬にえげつない刀傷があるこの男(画像)、組員たちから「叔父御!」と呼ばれていて、血気にはやる若衆に「静かにしろい! 組長の命令があるまでは、勝手な真似は許さねえ!」と啖呵を切って瞬時に大人しくさせる凄腕である。“叔父御”というのは「親分と五分五分の兄弟分」らしいから、若いのに立場も上等だ(アラカンさんと兄弟分!)

ところが敵の陰謀により、派手な出入りが起きる前に進駐軍に引っ張られてしまうので出番はあっという間。あの刀傷はアラカンさんを庇った時のもので、それがきっかけで盃を交わすことになったんだろうか、きっと元々は一匹狼でぶいぶいいわしてたに違いない、それよりどさくさに紛れて珠美姐さん(竜とラブラブ)が4代目になってしまってあの後どうなるんだろう、などと色々想像を逞しくする(しかない)役柄ではあった。

*オカマっぽい挙動やらウケ狙いの寄り目やらをしてのける吉田輝雄さん、ずいぶんこなれてきたようだ(似合っているかどうかは別として)

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=119 |
| 映画::新東宝 | 11:05 PM | comments (x) | trackback (x) |
『森繁の新婚旅行』
『森繁の新婚旅行』(1956年・S31)

四国の田舎町に左遷されたマイペースな新聞記者・森文吾(森繁久彌)は、ひょんなことから平家の末裔の御姫様・平小路敦子(紫千鶴)と祝言をあげることに。新婚旅行に東京見物としゃれこもうとするが、彼のスケジュール表をくすねた田舎の高校生たち(三木のり平など)がそれを修学旅行用に使ったおかげで、どこへ行くのも彼らと一緒で…というどたばたコメディー。

思いがけなくクレジットの3〜4番目の真ん中に名前があった天知茂24歳(誕生日前)は、森の同僚の新聞記者(冒頭のシーンでいえば、たぶんこれ←括弧内)。1度もアップが無いばかりか正面すら向いてくれない、(探す)難易度の高い役なのだが(この角度が最高←画面中央)、同じく同僚役の高島忠夫が「森さんはまっさきに会計課に顔出すんですよ」と言った後の「相変わらずだなあ」と、新婚旅行ときいて「ほう、じゃホヤホヤってわけだな」の台詞の言い方でなんとか確定できた。

台詞があったシーンの最後に森繁さんから「シケた顔してんな、お前」とアドリブめいたツッコミを入れられていた天っちゃん。新年早々(1月14日公開)こんな出番ではシケざるを得なかっただろう。

*この後、クリスマスパーティーとやらで歌い踊るシーンになるのだが、そこにはいなかったような気がする(とんがり帽子かぶって踊ってたら、それはそれで凄いんだが)。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=118 |
| 映画::新東宝 | 11:03 PM | comments (x) | trackback (x) |
『月の光(トラン ブーラン)』
『月の光(トラン ブーラン)』(1954年・S29)

(ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞)

南方戦線でゲリラ殲滅と現地人の日本語教育に携わる小林伍長(小笠原弘)は温和な性格で部落の人気者。ところが両親を戦争で失った歌の上手な少女・ベルダ(雪村いづみ)だけは彼に頑なな態度をとり続けていた。おまけに兄・アリ(沼田曜一)がメルド(三原葉子)との結婚資金のためにゲリラに加担、日本軍に捕らえられてしまったことで一層硬化するベルダだが、兄は小林の機転で命を救われたと知り徐々に態度を和らげる。

アリを逆スパイとしてゲリラ隊に戻す、というのが小林の策。ところがそのカラクリはゲリラのイスカンダル(というカッコいい名前はどこにも出てこなかった殿山泰司)に知れ、アリは捕えられてゲリラ隊長(ひとりだけエゲレスの冒険家めいたヘルメットを斜め被りして銀縁メガネを光らせた天知茂)の前に引き出され、リンチの挙句、日本軍をおびき寄せるニセ手紙を書かされた。

手紙が胡散臭いと踏んだ上官の田代(細川俊夫)は兵を出さず、その決定を知ったベルダはメルドと2人で出発。目をぎらつかせたゲリラ隊長らにまんまと捕まりあわや…!となりかけるが、逃げてきたアリ、そして駆け付けた小林たち日本兵によってゲリラたちは一網打尽とあいなった。

…ワタシ的にはゲリラ隊長がさしたる抵抗もみせずに手を挙げた時点で話が終わったのだが、この後、小林センセイにメロメロになったベルダが鈍感極まりない彼の気を引こうと「2人の男にプロポーズされた」などと言って翻弄し、それでもやっぱり鈍かった小林がいろいろあってようやく彼女の気持ちに気付いたところで部隊が他所へ移動、ベルダ涙の別れ、というのが映画の主題。

*公開が主演デビュー作『恐怖のカービン銃』のほぼ1カ月後であるせいか、開眼したての冷徹なワルの雰囲気が同映画に酷似していた。ただあっちは色気を感じる余裕があったが、こちらは顔をゆっくり拝む暇もなく出番終了。まあ流暢なマレー語(推定)だけは堪能できたのでよしとしよう。

*「ニヒル 天知茂」(ワイズ出版)でこの映画のものとされているスチールは別作品と判明(よくみたら『女真珠王の復讐』っぽい)

*主演の小笠原さん、前も書いたがこの年はほんとに目立っているのだが、キャラがウツイ系だからだんだんあっちと被ってきて仕事がなくなったのかもしれない。

*アリとメルドの結婚式シーンに森悠子さん(天っちゃんの未来の奥様)の姿があるらしい…と聞いたのに判別できなかった。←修行が足りない

*そういえば「隊長」だったゲリラ隊長だが、彼らが投降した後も小林たちはもっと強そうなゲリラ集団に襲われていた。どれだけローカルだったのか。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=116 |
| 映画::新東宝 | 10:59 PM | comments (x) | trackback (x) |
『リングの王者 栄光の世界』
『リングの王者 栄光の世界』(1957年・S32)

立ち退きの迫る家で母親と足の悪い妹とで暮らす魚河岸の新ちゃん(宇津井健)は、ボクサーになって家族を裕福にしようと新聞記者の畑さん(伊沢一郎)の勧めを受けることに。調子よく勝ってゆく新ちゃんだが、試合中にガールフレンドの京子ちゃん(池内淳子)にデレデレして足が止まる始末。自分と同じ轍を踏ませまいとトレーナーの岩崎(中山昭二)は京子ちゃん引き離しを画策するが、その結果、よりタチの悪い悪女(クラブのマダム:若杉嘉津子)の毒牙にかかった新ちゃんは、宿敵の三田村(元アスリートだけに脱いだらすごかった細川俊夫)に敗れるわマダムに捨てられるわで踏んだり蹴ったり。しかし辛抱強く見守ってくれた岩崎や畑さん、そして京子ちゃんのおかげで、打倒・三田村に向けてファイトを燃やすのだった。

*石井輝男監督のデビュー作。こんなスポ根ドラマが似合わないことこの上ない天っちゃんの役名は「幹部B」、新ちゃんの所属する旭光倶楽部の会長のお付きで、幹部というより会長さんにコート着せたりするただの下っぱ君である。しかし、こんなセリフすらない“仕出し”も本作品が最後、徐々に上り調子になってくる新婚さんなのだった。

【幹部B 写真集】
チンピラ然とした初登場シーン
*負けを認めたくない新ちゃんに詰め寄られてつらそうに俯くシーン
*心を入れ替えて練習に精出す新ちゃんを温かく見守るシーン
*DVDに収録されていた唯一映ってるスチール

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=115 |
| 映画::新東宝 | 10:56 PM | comments (x) | trackback (x) |
『海よ俺ら(おいら)の歌に泣け』
『海よ俺ら(おいら)の歌に泣け』(1961年・S36)

(TCC試写室にて鑑賞)

シャイだが歌が滅法うまいフェリー乗りのアキオ(白根一男)はみんなの人気者。あるとき歌手が夜逃げした楽団の代理を頼まれてショーに出演、コーディネーターのキヨハラ(小松方正)の強い勧めで歌手への道を進むことになる。

頑固な父親の反対を押し切って楽団メンバーについていったアキオだが、売れないドサ回りが続くばかりで一向に芽が出ない。そんなある日、海にむかってタイトル曲をまるでマイクがあるかのように歌っている彼の歌声を、大手音楽プロの部長が耳にするものの、ひとあし違いで会えずじまいに。

やっと東京に出て、親切なママと娘のマリ(万里昌代)のいるバーの2階に住み込むメンバー。アキオファンのマリが新人歌手のオーディションの話を持ってくるが、海の前でないとアガるらしいアキオの出来は散々、しかも審査に加わっていた件の部長がちょうど彼の番のときに席を立っていたというイタタなすれ違いもあって、当然のごとく落ちてしまった。

キヨハラの母が危篤になったり、出演予定だったショーでごたごたが起きたりで、とうとうメンバーたちは流しで日銭を稼ぐ生活に。郷里の知人に会ってしまったアキオは自分の今の境遇に打ちひしがれ、ひとりで歩いているところをチンピラ(泉田洋志さんら)に絡まれ、殴り合いの喧嘩になる。その喧嘩を高見の見物としゃれこんでいたこじゃれたスーツの男(特別出演:天知茂)がやおらアキオの助太刀をかってでると、カッコいいんだか悪いんだか見てるこっちが恥ずかしいんだかで正視しづらい殴り合いをしばらく続けて敵を撃退。

アキオの歌を店で聞き、すっかり惚れ込んだらしい彼、「俺の友達のキャバレーで歌ってみないか」とアキオを誘ってくれた。…のはいいが、キャバレーでは新しく楽団を入れたばかりで空きはなかった。仕方ない、でも夢を諦めるなよ――そう言って肩をぐっと掴んで励ましてくれた男の言葉に少しは慰められ(たかどうかは不明だが)下宿に戻ったアキオを、マリが待っていた。なんと、あのすれ違い部長がとうとうアキオを探し当ててくれたのだ。

部長のおかげで大きな歌謡大会に出場することになったアキオとメンバー。観客の中には、わざわざ来てくれた父親や家族、そしてマリがいた――。

*とにかく情報のない作品だけに、いったいどこに出てくるのかと(フェリーの船長か?逃げた楽団の歌手か?ドサ回り先の興行主か?オーディションの面子か?等等)ワクワクしながら見ていたら、親切な通りすがりとして颯爽と登場。でも実質なんの役にも立ってないほんとに通りすがりだったのがさすが特別出演というべきか。無垢なアキオに親切ごかして近づき、なにやら怪しいところへ売り飛ばす男、とかだったら面白かったのだが(笑顔は胡散くさかったんだけどなあ←何を期待しているのか)。ともあれ、あれこれ想像しながら楽しく見られたのは良かった。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=114 |
| 映画::新東宝 | 10:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
『叛乱』
『叛乱』(1954年・S29)

ニ・ニ六事件の顛末を、首謀した青年将校たちの熱情やその弊害などを絡めて描いた渋い作品。

クーデターを声高に叫ぶ栗原中尉(小笠原弘)たちとは違い、任された兵たちのことを思い逡巡しまくった安藤大尉(細川俊夫)。だがいったん決意してからは誰よりもやる気マンマン、事件後、叛乱軍として討伐されることになり、撤退する将校も増えてきた中でもひとりで気を吐いていたのだが、とうとう自分の兵たちの解放を決意する……というラスト近くで登場するのがおそらくノンクレジットの天知茂。

占拠した山王ホテルの庭で、撤退を告げる安藤の言葉を聞く兵士たち。一番手前になにやら日本人離れした鼻筋の兄さんがいる。アップになると微妙に別人っぽく見えたりもするのだが(相対的にふっくらしているせいか?)、涙を流しながら歌う彼らの声を背に部屋に入り、ピストル片手に自殺を図ろうとして仲間に止められた安藤に「中隊長どの、死なないで下さい!」と真っ先に必死に訴える右端の人物はどうもそうらしかった。

公開は1954年1月。主演デビューはおろか、まだ虫も喰ってない頃(『潜水艦ろ号未だ浮上せず』参照)だけに微々たる出番が辛いが、それもあと数か月の我慢だ天っちゃん!

*『ろ号』といい『トラン・ブーラン』といい、同期の小笠原弘さんがスパークしていた年でもある。しかしこの作品であれだけ目立っていたにも関わらず、goo映画などではクレジットが完全に抜け落ちているのは謎。

*鶴田浩二さんがいたり新国劇の両巨頭がいたり、出演者がかなり豪華。しかも監督は、途中交代したとはいえ佐分利信!(←実はけっこう好き)

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=113 |
| 映画::新東宝 | 10:52 PM | comments (x) | trackback (x) |
『静かなり暁の戦場』
『静かなり暁の戦場』(1959年・S34)

「アジアをアジア人の手に」をスローガンにマレー半島を進む日本軍。英語が話せる国井中尉(本編では「少尉」と呼ばれていたような気がする:天知茂)は、捕虜となったインド人将校の尋問にあたることになった。仏典を大事そうに携帯した、軍医だというそのぽっちゃり将校・パトナイク中尉(S・プラカーシ・ガンディ)の信仰心とインド独立への固い意志を察した国井は彼を上官の暴力から護り、さらに彼を追ってしゃしゃり出てきたフィアンセのカムラ(エリーズ・リヒター)の存在も黙認してやるなどして、“友人”のスタンスでインド人捕虜たちと接する。

本隊は前進することになり、国井は一人、数十名の捕虜たちの監視役に回された。彼らの歌う独立を願う歌に胸打たれたロマンチスト国井は、友情の証として自らの大事な軍刀をパトナイクに預けた。パトナイクとカムラもまた、この隙に逃げ出そうぜ、と画策する者たちを説得、国井の信頼に応えた。

そんな折、橋の修理を任されて捕虜たちと汗を流す国井。だがパトナイクは、日本軍の戦車が通り、再び同胞たちの血が流れるかもしれないその橋の完成を修理にも行かずに(って、一応医者だから待機して)鬱々と見守っていた。あなたらしくないわ、インド独立のために前向きになってと励ましてくれるカムラと熱いチュウを交わした瞬間、指令部の上官が国井と帰還。何やっとるんだー!と至極まっとうに激怒した上官は、こんな状況でも2人をとりなそうとする国井もろともパトナイクをぶん殴って去る。「どこの国にも悪い人はいるものです」お前が言うかな台詞をぬけぬけと吐くパトナイク、その言葉にウルウルきてサンキュー言っちゃう国井、二人の絆は(見る側のツッコミをよそに)ますます深くなるのだった。

そうこうしているうちに英国軍との戦いは激しさを増し、親友の須賀(杉山弘太郎)率いる偵察隊など二隊が続いて全滅してしまった。次はお前が行って来いと部隊長に命じられた国井は、勝算ゼロにも関わらず捕虜たちに別れを告げて出撃を決意。ところがパトナイクが、敵軍にいるインド兵の説得をかって出た。部隊長は、残りの捕虜たちを人質にすることを条件に彼の提案を承諾、パトナイクは数名の志願者と、またしてもしゃしゃり出たカムラを連れて英国軍のトーチカへと向かう。

案の定といおうか、トーチカに近づいただけで蜂の巣にされかけて倒れるパトナイクとカムラ。待てど暮らせど彼らからの連絡はなく、国井は捕虜たちと先頭に立たされてトーチカへと前進することに。しかし、夜明けの戦場の静けさを破ったのは美しいインドの調べ。パトナイクの説得で投降したインド兵たちの輪の中で、国井は喜びをかみしめるのだった。

*インドと日本の架け橋となるべく、英語を駆使して奮闘する生真面目な将校役。主役のうえに芸術祭参加作品、おそらく天っちゃん的には同年の『東海道四谷怪談』以上に頑張ったのではないかと思われるが、そんな彼の一生懸命さに比べると、パトナイクがどうにもあっさり気味で、およそ戦地とは思えない雰囲気を醸し出していたのが気になった。緊張感のないぽっちゃり体型には目をつぶるとしても、もうちょっと苦悩を顔に出せよパトナイク! 戦場で女性とべたべたいちゃついてる場合じゃないだろパトナイク!(カムラもうろちょろすんなよと言いたい)。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=112 |
| 映画::新東宝 | 10:50 PM | comments (x) | trackback (x) |
『黒と赤の花びら』
『黒と赤の花びら』(1962年・S37)

(TCC試写室にて鑑賞)

悪質な船の保険金詐欺を捜査中に遭難、死亡したとされる同僚・西条(安井昌二)の死の謎を追う、海上保険調査員の田代雄二(かなりの痩身だが髪型はイケてる天知茂30歳)。五百円で何でもオーケーと請け負うOKの松(大友純)から、真相を知っているらしい男・百瀬の所在を聞き出すが、部屋に入ると男は死んでおり、不審な先客がいた。彼女・笹本アキ子(上月左知子)は西条のフィアンセ。西条の死が信じられないアキ子もまた百瀬を訪ねてきたのだが、そのときには死んでいたらしい。慌てて部屋を出る二人だが、西条の形見のシガレットケースを落としたアキ子のためにもう一度戻ると死体は忽然と消えていて、なんと翌日、離れた場所で轢死体となって発見された。

OKの松が次に教えてくれたのは、百瀬に貸しがあったというスタジオ経営者の花田(丹波哲郎)なる人物。のらりくらりとはぐらかす花田、そして花田のスタジオにいたモデル(扇町京子)が接近してきたものの、ヤク中の彼女は何か話す前に田代の目の前で殺されてしまった。そんな折、田代はとあるクラブ(その名も「宇宙人」)で、西条が乗船していた船の航海長、冒頭でいかにも悪い奴然とした行動に出ていた蛭間(細川俊夫)に遭遇する。面と向かって鋭く核心をついた田代は蛭間の手下たちに襲撃されるが、間一髪でかわした。

田代はアキ子と共に花田の事務所に忍び込み、彼の恐喝の事実を掴む。そこへ飛び込んでくる弾丸と、花田を心配する電話。どうやら花田は何者かに狙われているらしい。田代が恐喝された教授の代わりに取引場所(駐車場)に出向くと、花田ではなく「宇宙人」で怪しい踊りをくねくねと披露していたダンサー(その名も「ガガーリン」:三原葉子)が現れる。そこでタイミングよく運ばれてきた新聞には、花田らしき男の溺死体があがったと出ていた。驚く二人。実は花田の実の妹・まさみだったガガーリンは協力しそうな顔をしながらも田代をとある場所に連れ込み、ある会社の名前だけ告げると彼を監禁して逃亡する。

そのころ、当のその会社にはアキ子が潜入していた。不審な挙動にでた彼女は蛭間の手に落ち海上へ。その船の船長は死んだはずの西条だった。学歴詐称して調査員になったという負い目が高じ、ミイラ取りがミイラになってしまったという西条に愕然とするアキ子。さらに彼の傍にはガガーリン=まさみの姿が。アキ子を襲った蛭間ともみ合い彼を撃った西条。とそこへ、(展開上微妙にタイミングが遅かった気もしないでもないが)セーターの毛糸をほどき、腕時計を窓から垂らして子供に見つけてもらう、という少年探偵団レベルの脱出劇を披露した田代が颯爽と現れた。一緒に戻ろうと西条を説得する田代だが、蛭間の放った銃声で鳴り響くサイレンを聞いた西条はもはやこれまでと、ガガーリン=まさみの手をとって海の藻屑と消えた。

すべてが終わった埠頭にて。残されたアキ子は本当に形見となったシガレットケースを海に投げ入れると、ふっきるように歩き始めた。そんな彼女の肩にそっと手を当て、田代もまた埠頭(と映画)を後にする――。

*新東宝亡き後に作られた「大宝」配給作品。助監督だった山際永三さんのお話によれば、当時の上映館は全国で10あまりしかなかったとのことで、新聞の縮刷版でも1963年の10月と12月にTBSでTV放映されているのが確認できた以外は情報がなく、でもワイズ出版の天っちゃん本ではやたらとかっこいいスチールが多く収録されていてずっと気になっていた幻の映画をありがたく鑑賞させていただいた。出だしが笑っちゃうほど悠長で、こんな調子で真相なんて暴けるのかと心配したものの、田代と一緒に驚いたり反芻したりしているうちにいつのまにかクライマックス。でも正直、出番は多いけどいなくても(アキ子さんだけが真相を捜し求める話にしても)よかった役だよなあ、と思ったりもして。やっぱガガーリンは田代とくっついてくれないとつまらないなあ(そこか)。

*原題は「海の罠」だったものの、これじゃあ地味すぎるからってことで、当時はやってた歌「黒い花びら」(by水原弘。天っちゃんも好きだったらしい←「五十年の光芒」で読んだ気が)あたりから拝借したらしい。余計意味がわからなくなってる気がするが、妙な勢いだけは感じる。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=111 |
| 映画::新東宝 | 10:44 PM | comments (x) | trackback (x) |
PAGE TOP ↑