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『斬る』
『斬る』(1962年・S37)
(新文芸坐にて鑑賞)

数奇な運命の下に生まれた青年・高倉信吾(市川雷蔵)を軸に、“斬る”という行為が織り成すさまざまな哀しい人生模様を描き出した逸品。

天っちゃんの役どころは信吾の実父・多田草司。たまたま使者として逗留していた藩において、殿様を色香で惑わす妾を家老の命を受け暗殺し拘束された侍女・藤子(藤村志保)の身柄を拉致して子を作ってくれと頼まれた彼は、颯爽と馬を駆り藤子を奪い、1年後に信吾を授かった。

しかし、1年も経って子供もいれば殿様の怒りも収まるだろうとの家老の読みは外れ、藤子は再び捕らえられ処刑されることに。誰も彼女を斬りたがらない中、役目を請け負ったのは草司だった。清め刀を前にして、微笑みを交わす夫婦の姿が切なくも美しい。

信吾は養父・高倉に預けられ、彼の実の子として明るく育っていたのだが、近所の同僚のジェラシーによって養父と義妹が惨殺され、父の今際の言葉によって出生の秘密を知る。訪ねあてた廃屋には僧服姿の実父・草司がいた。独りで寂しくはないのかと問う信吾に、お前のお母さん(←「お前の母」でも「お前の母上」でもなく、「お母さん」)といつも一緒だ、墓に入ればそのときこそ二人で生きられる、そう思うと心がほのぼのしてくるのだ、とかなんとか、大部分この世のものではなくなったような風情で語る父。自分の居場所はここにはないと悟った信吾は、さすらいの旅へと出て行くのだった…。

その後の信吾にはいろいろと辛いことが起こるわけだがそこは(もう天っちゃんもいないので)省略するとして、この薄幸な息子の巻き込まれ型悲劇人パパが言葉すくなに心情を表現するさまは、映画自体の様式美とあわせて見どころのひとつである。

ただ何度見ても、信吾が訪ねてきたときの「お前のお母さん」という台詞(2度ばかりある)が時代劇らしくなくて耳に残る。天っちゃんうまく「母(ハハ)」っていえなくて台詞変えたのか?などと失礼なことをいろいろ考えてしまったのだが、もしかすると草司パパの時間は愛妻を斬った瞬間に止まってしまい、もうあっちの世界に住んじゃってるから、育った信吾も赤ん坊にしか見えず、それで噛んで含めるような「お母さん」になったのかもしれない。

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| 映画::大映with市川雷蔵 | 12:00 AM | comments (x) | trackback (x) |
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