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『修羅の群れ』
『修羅の群れ』(1984年・S59)

侠客・稲原龍二(松方弘樹)の昭和初期からの出世苦労物語。のっけからサブちゃん(北島三郎)が熱唱してるし、BGMは大袈裟だし、それに輪をかけて大袈裟な演技が繰り広げられるしナレーションは小池朝雄さんだしで、東映オールスター・漢(おとこ)祭りとでも言いたくなる賑々しい勢いだ。

しかし我らが天っちゃんは、いちおう単発クレジットで名前がどどーんと出てきたものの、丹波さん、鶴田さん、若山トミーさん、サブちゃん、文太アニィ、欣也さんなど、当時の東映系大物が次々と出てくる中、1時間経ってもまだ姿が見えない。そのうち二世俳優もわんさか出てきて、図らずも宮内洋氏まで見つけたのに、出てこない。賭場なんかで画面の隅までチェックしてみるが、いない(昔じゃあるまいし、そんな片隅にいるわけがないのだが)。まったく気を持たせる男である。

アニキィ! オヤジィ! うお~!と暑苦しい修羅(=おっさん)の群ればかり追うのがさすがにしんどくなってきた1時間50分後(本編終了13分前)、唐突に場面は高級クラブの片隅に。ピアノの音色をバックに両手に花状態でどっかと腰掛け、ブロンド女性からYou're very handsome man!と言われていやあ、あっはっはとまんざらではない様子で頭をなでなでしてやりながら一杯やってる映画の雰囲気的に場違いな男。彼こそが、天知茂(役名:大島英五郎)! 他の大物さん達のような着流し姿が見たかった気がするが、いかにも夜の街でブイブイいわせてそうな紺スーツに色眼鏡の胡散臭さ堂に入っている

と、そこへ文太アニィ(松方の兄弟分だが言うこと聞かずに暴走、鶴田のおじきにどつかれて改心したばかり)が登場。
「あにき、八州会の大島会長(=天っちゃん)がお見えになってますぜ」
なんだか知らないが色眼鏡のおじさんはその筋では偉い人らしい。
弟分がそっと耳打ちすると、文太はふふんと鼻で笑って席に近づいてきた。
「よお、大島く~ん!」
実に態度のデカい軽口を受けた大島は、煙草片手にニヒルに言い放つ。
「・・・おめぇさんに『くん』呼ばわりされる覚えはねえな」
内輪ネタともとれるこの台詞に新東宝フリークのお父さんたちはウケたに違いない(っていうか私が非常にウケた)。

部下同士が一触即発になるが、拳銃を取り出した子分をしばいた文太は何をするでもなくプイと消え(貫禄負けか?←たぶん違う)、大島会長は「稲原(=松方)って男はそんな(俺に楯突くほど)馬鹿じゃねえよ」といきまく部下を止めて、おしまい。おそらくビッグネームの皆さんの誰よりもショートな出番だというのに、文太とのやり取りが映画予告編にもちゃんと入ってるところが凄すぎる天っちゃんだ。…それとも、予告編作った時にはここしか撮影していなかったと見るべきか?

*喧嘩にすらなってなかったと思うのだが、かつてのセンパイに冷たくされて悲しかったのか(そりゃ内輪の話)、「大島が喧嘩吹っかけてきた。やるぜ!」と松方の指示も仰がず勝手に若い衆を煽って戦争をしかけようとした文太、今度はほんとに破門にされた。

*個人的に主演の松方氏がどうにもニガテなので辛かったのもあるが、天っちゃんってのは(胡散臭さはたっぷりあるが)暑苦しさとかむさ苦しさを感じさせない人だったんだなあと、出てこない間にその存在の貴重さをしみじみ感じた。

*この映画、顔見せがメインなのでかどうかは分からないが、時代がどんどん進んでも登場人物がまったく年を取らないのでややこしい。19歳から同じ顔の松方氏を筆頭に、鶴田さんなどは30年くらい経過しても全然変わってないのはどういうわけだ。

*予告編でずらずらっと出てくる主要人物一覧。他の人は映画からのスナップっぽいのに、ひとりだけブロマイド風の天っちゃんがヘンだ(しかもなんか若くないか?)

(2011.2.14追記)原作について
「八州会の大島英五郎」は出て来ないのだが、後編の中盤で「東方会の町村広行」なる人物が登場し、同じ状況で井沢(文太)とひと揉めしていた(韓国籍でその方面に人脈がある、云々の設定はストーリー上要らなかったので名前が変わったのかもしれない)。町村会長は「目鼻立ちの鋭い、背の高い六尺近い偉丈夫」で、怒って手錠をひきちぎるほど気性が激しく「銀座の虎」と恐れられていたらしい。で、井沢に「町村くーん」と言われて
町村は、静かだが力のこもった声で言った。
「おまえさんに、君呼ばわりされるおぼえはねえ」
(本文引用)となるわけだが、この一言を文太に放てるうってつけの人物、ということで必然性のあるキャスティングとみてよさそうだ。

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| 映画::東映 | 12:22 AM | comments (x) | trackback (x) |
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