■ADMIN■
ADMIN ID:
ADMIN PW:
■CATEGORIES■
■POWERED BY■
BLOGN(ぶろぐん)
BLOGNPLUS(ぶろぐん+)
■OTHER■

『憲兵と幽霊』
『憲兵と幽霊』(1958年・S35)

鹿島茂著「甦る昭和脇役名画館」(横目な色悪/天知茂)などで絶賛されている作品を、新文芸坐の大スクリーンでようやく鑑賞。かなり“雨降り”がひどく音や映像がばしばし飛ぶのが残念だったが、キーンと耳障りな金属音BGMが不快感を煽り、雰囲気は十二分に掴めた。

ゲットしそこねた女・明子(久保菜穂子)の祝言を、勝負はこれからとばかりに横目で舐めるように見つめる波島憲兵(少尉から中尉へ:天知茂)。彼には中国側のスパイという裏の顔がある。気の毒な旦那・田沢伍長(中山昭二)に自分の濡れ衣を着せ、妻や母ともども激しい拷問にかけた揚句に銃殺刑に処す冷酷非情ぶりを見せた波島は、邪魔な田沢の母を自殺へ追いやり、とうとう明子の体を奪って目的を達成する。

しかし、顔に似合わずえげつない呪いの言葉を吐いて死んだ田沢に瓜二つの弟(中山二役)がなけなしの良心をチクチクと刺激する上、濡れ衣の共犯である部下が造反、思わず刺してしまい行李に突っ込んで海へ投げ込む羽目になる頃から、波島の悪運は尽きようとしていた…。

実はこの映画の不思議な面白さは、『悪いヤツが幽霊におびえて自滅する』という典型的お化け話と並行して、ピカレスク・ロマンというべきもうひとつの物語が展開しているところにある。三原葉子ねえさん演じる紅蘭との儚いラブ・ストーリーがそれだ。

祝言の日、たまたま酔漢から助けた紅蘭は、自分が通じる中国側の取引相手・張覚仁(芝田新)の愛人。父が自殺し云々という不幸な波島の過去を知った上で真摯な同情のまなざしを向けてくる彼女に、明子へのサディスティックな態度とはうって変わった深い愛情を返す波島。そんな二人に張は当然ジェラシーに燃え、こっちでも波島は万事休すと相成る…のだが、一見作品の主題を散漫にしているようなこのサイド・ストーリーがあるが故に、墓地での進退窮まった波島の狂乱ぶりに重みが増しているように思うのだ。

蛇のような粘着質憲兵が似合いすぎていて、紅蘭との絡みではまるで別人にみえるという難点もあれど、単純ではない悪人をいつもながら真剣そのもので演じ切っている天っちゃんに拍手。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=90 |
| 映画::新東宝 | 11:17 PM | comments (x) | trackback (x) |
PAGE TOP ↑