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浮草
浮草(1964年・S39・1月5日OA)CX 22:00-23:00

演出:土屋達一郎
出演:柳永二郎(駒十郎)、藤間紫(すみ子)、加賀まりこ(加代)、杉村春子(お芳)、岸田森(清)、宮口精二、西村晃、殿山泰司、天知茂
昭和9年と、戦後は昭和34年に故小津安二郎監督によって映画化された作品。ドサ廻りの旅芸人一座を舞台に、その生活と哀観を描いていくもの。
相生座の座長・嵐駒十郎は12年ぶりでやってきたこの町に、思い出深いものがあった。それは12年前、お芳という女となじみができ、子供をつくったままこの町をさってしまったからだ。駒十郎は足のむくまま、お芳の家を訪ねたが……。
(以上、週刊TVガイドより引用)

*小津監督の「浮草」は未見なのでなんともいえないが、このメンツの中では年齢的に岸田さん(息子役)に一番近い天っちゃんの役柄が気になるところだ。ぎりぎりでも一応名前が載っているから、少しは目立っていたのだろうか?

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=521 |
| TVドラマ(現代劇)::その他(単発など) | 10:15 PM | comments (x) | trackback (x) |
悪の紋章
悪の紋章(1965年・S40・10月7日〜翌3月31日OA:全26回)NET 22:00-23:00
【本誌に連載の異色小説】
原作は、朝日新聞に連載された橋本忍の異色小説で、悪徳警官の汚名を着せられた社会的に葬り去られようとした一警部補(天知茂)が、出所後復讐の鬼となり、その背後にあるものと対決してゆくサスペンスにあふれたミステリー。出演は愛京子、多々良純、神戸一郎、高城丈二ほか。
(以上、朝日新聞縮刷版より引用)
【汚名を着せられた警官の復讐】天知茂と愛京子主演
「アスファルト・ジャングル」に引き続き、サスペンスタッチで描くミステリードラマ。この作品は37年10月から朝日新聞に連載され、シナリオライター橋本忍の初の新聞小説として話題になったもの。
また39年6月には、新珠三千代、山崎努のコンビで東宝で映画化されている。
悪徳警官の汚名を着せられ復讐に燃える主人公の稲村には、久しぶりの天知茂が登場し、相手役には大阪で片岡プロデューサーが見出したというズブのしろうと愛京子が抜てきされている。
物語は、現職の警官が殺人事件を捜査中、何者から身に覚えのない罪を着せられ、身の潔白を証明できないまま投獄され、出所後、その犯人を追うというもの。
第一回の今夜は、3年の刑期を終えて出所したところからはじまる。
――菊地正明は、小菅刑務所を出た足で旧友の松野の勤務先、塚本興信所をたずねた。
松野は、菊地の前に”塚本興信所 稲村清一”という名詞を差し出し「すっかり生まれ変わったつもりで昔の名前や苗字は一字も入れなかったよ」と菊地に言った。
菊地正明は、きょうかぎり稲村清一を改名し、この塚本興信所で調査員として働くはずなのだ。

10月7日
【復讐の主はすでに死んでいた】
稲村が刑務所を出ての第一の目標は、彼の妻をたぶらかし、彼を刑務所へ送り込んだ直接の加害者、花井への復讐だった。
しかし、花井は数ヶ月前チンピラの谷川という男と口論したことから刺され、すでに死んでいた。
稲村は、花井の親分である三共興業の社長、東善作に会うことを思い立った。三共興業には、花井の弟分、鉄がいるはずだ。せめて鉄でもいれば、いくらかその後の情報が聞けると思っていたが、その鉄も宇都宮の刑務所で服役中だった。
社長の東は世間の不景気をよそに相変わらずはぶりがよく、3年ぶりに訪ねた稲村を何とかかかえこもうとしていた。帰りがける稲村に、東は1枚の封筒を差し出した。中には2枚の千円札が入っていた。
彼は苦笑すると、その封筒を無造作に引き破いて捨てた。

10/22号 茶の間の茶
地のままでやった幽霊役? 神戸一郎
このところ、すっかり演技づいている歌手の神戸一郎、現在NETテレビの「悪の紋章」に出演しているが、この役というのが幽霊。
撮影前、はじめての幽霊役とあって心配していたが、「プロデューサーから地のままでやれといわれたので、思いっきりキザな幽霊になりました。”なんだあの野郎、へらへらしやがって”といわれれば成功だと思う」と幽霊初出演の弁を語っている。
(以上、週刊TVガイドより記事引用)

*放映リストはこちら
*OP映像収録ビデオあり(東映TVドラマ主題歌大全集(1))。

*映画ではショボクレ(「鉄砲犬」ごろ)を演じながら、テレビではすさまじい復讐鬼。そのギャップが凄い。「次郎長…」などと違って外見から想像しやすい役柄ではあるが、見られないのは辛い…どこかに埋もれていないかなあ?

*原作について(2008.4.30)
とある死体遺棄事件の捜査に関わった警部補・菊池正明は、麻薬運搬、恐喝、その他いろいろ罪をでっちあげられ刑務所に送られた。2年後、出所し名前を「稲村清一」と変えた彼は自分を陥れた人物(元妻を含む)を執念で突き止め、報復を誓う。かつての先輩刑事・松野は、再出発を棒に振り過去に囚われたままの菊池=稲村を憂うが、彼の決意は変わらない。徐々に荒んでゆく菊池=稲村の心を唯一和ませてくれるのは、偶然の出会いから懇意になった女性・節子の存在。だがその彼女も実は……。

「モンテ・クリスト伯」的とはいえ、よりいっそう壮絶で救いのない、とにかく読中・読後がずっしり重い話だった(しかも借りたのが、映画のスチールが文中に挿入されている版で、ものすごく目つきの怖い山崎さんの顔で余計に気分が滅入ってきた)。こんなのを朝から読めた当時の朝日新聞、すこぶるディープである。

ところで、この作品しかり「雲霧仁左衛門」しかり、山崎さんと天っちゃんはコワモテという部分で同じカテゴリの人といえそうだが、このふたり、決定的に何かが違うような気がする。具体的にどう、とは言いづらいのだが、たとえばゲンと弥藤次(「無宿侍」)はキャストを入れ替えられないと思うし、頭に懐中電灯差して村人を無作為に殺しまくる役(「八つ墓村」)なんてのは天っちゃんには無理じゃないか、そんなふうな違いである。役者としての力量云々というレベルの話は置いておくとして(そんなものを語り出すと分が悪そうだし←失礼)、動物的な凶暴性、とでもいうのだろうか、平気で理性をぶっとばせる、ホントに怖い人間の狂気を醸し出せるか否かで両者の間には境界があるように感じる。

見慣れてしまったせいもあるかもしれないが、天っちゃん演じるキャラは大体において「何をしでかすか分からない怖さ」というのがない。顔や動きで性格がみえてしまうのだ。それはおそらく、彼自身が肉付けの際、そのキャラのすべての言動に理由を持たせてしまうからではないか、と思う。人を殺すのも、悪事を働くのも、天知キャラには相応の動機がある。悪なりの理性がある。だから怖くない→マダムやお子ちゃま層も安心して惚れちゃう、という図式が成り立つんじゃなかろうかと。
・・・そんな彼が、半ば狂気に導かれた稲村をどう演じ切ったのか、すごく興味がある。ほんとにOPしか映像が残っていないとしたら残念だ。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=520 |
| TVドラマ(現代劇)::その他(シリーズ) | 10:12 PM | comments (x) | trackback (x) |
次郎長三国志
次郎長三国志(1964年・S39・1月8日〜6月24日OA:全24回)CX 21:45-22:15
【次々おなじみの顔ぶれ/13回連続の「次郎長三国志」】
『 村上元三の原作を浅川清道が脚色、13回にわたって送られる。若き日の次郎長を主人公に、1話ごとに変わった男が登場し、子分になっていくという構成になっている。第1話「桶屋の鬼吉」、第2話「森の石松」と次々におなじみの顔ぶれが登場、清水28人衆が勢ぞろいするというわけだ。主人公の次郎長には「銭形平次」以来久しぶりに時代劇に出演する安井昌二。きょうの第1話はオケ屋の鬼吉に天知茂がなるほか、大辻司郎、原知佐子、花園ひろみ、若柳敏三郎、中村是好、上田吉二郎ら。』
(以上、朝日新聞縮刷版より。13回予定が、好調ゆえか24回に延長した模様)

#2(1/15)
(前略) タンカ、出入り、義侠、色模様と、ワンコース揃っているからけっこう面白そう。「ことしはコメディ路線にのりたい」と言っていた天知茂が鬼吉に扮して中国弁(*名古屋弁?)をしゃべる。「三匹の侍」の長門勇の向こうをはったわけでもあるまいが……
(週刊TVガイドのあらすじより)

[読者サロン] (週刊TVガイド 1964.2.7号より)
【楽しめる天知茂の新境地】(鎌倉市・Mさんの投稿)
8日からスタートしたフジ「次郎長三国志」は楽しめる時代もので1回目を見てたちまちこの番組のファンとなったが、このドラマで桶屋の鬼吉に扮した天知茂が今迄とガラリと変わった明るい面白い味を出し、大いにはりきっているのが注目される。コミカルな味のものはすでに「虎の子作戦」のシャネル役で成功しているが、この鬼吉はそれとはまたべつの“楽しさ”を味あわせてくれる。
喧嘩の早い短気者で血の気の多い男でいかさま賭場へなぐり込みをかけ次郎長を追って来て盃をくれと坐り込む威勢のよさを見せるかと思えば、花園ひろみ扮するお千と顔を合わせると、好きなくせにろくに口もきけず果ては奇声を上げてかけ出してしまったり、夜回りをしながら障子にうつるお千の影を見上げて、そっと名を呼んでからテレかくしのようにやたらに拍子木を鳴らし「火の用心」とどなるあたりのコミカルな演技にはたびたび笑いを誘われてしまった。
天知といえばニヒルなムード、悪の表現の巧みさが特質と思われがちだが、それだけでなくこうした明るい、カラリとした味も出せる人であることを改めて感じた。名古屋弁のセリフ回しもユーモラスで「いなかやくざ」の味を出すことに成功している。ともあれ、天知のこんごの活躍を心から祈る。
*具体的な演技について書かれていたので引用。そんな過剰な(きっと大真面目に取り組んでいただろうことは想像に難くないが)コミカル演技、見てみたい。

[茶の間の茶] (週刊TVガイド 1964.2.21号より)
【天知は言語学博士?】
安井昌二、天知茂、大辻伺郎などをズラリならべた「次郎長三国志」。なかでも、桶屋の鬼吉を演ずる天知茂は、流暢な名古屋弁でなかなかの人気である。
というのも、天知はれっきとした名古屋生まれの名古屋育ち。「生まれ故郷の言葉ならまかしてチョウヨ」とばかり、「……でなも」とか「きゃあも」とかしゃべりまくっている。
このため番組の名古屋弁は天知にまかされたかたち。そして、これも名古屋育ちの奥さんと吹き込んだテープを、あらかじめ吉田ディレクターにきいてもらって検閲をうけている。そこでスタッフたち、この番組に関しては、天知に“言語学博士”の称号を奉って敬意を表しているとか。
*先にテープに吹き込んでチェックしてもらう生真面目さに敬意を表する。

*「気っぷのいい」だの「オッチョコチョイ」だの雑誌記事でも大評判の鬼吉兄ィ。せっかくの三枚目演技が今では埋もれてしまっているのかと思うと残念だ。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=469 |
| TVドラマ(時代劇)::その他(シリーズ) | 05:40 PM | comments (x) | trackback (x) |
『坊ぼん罷り通る』
『坊ぼん罷り通る』(1958年・S33)

化粧品会社を営む父の旧友、大友(由利徹)を訪ねて東京へやってきた大阪の坊ぼん・水島光一(高島忠夫)が、持ち前の傍若無人な坊ぼん気質で恋に仕事に歌にとハッスルする青春映画。

光一の機転で売り出された新製品・シロクナールの人気はうなぎ上りだが、何者かによって大量に横流しされ安価で出回っていることが判明した。腰が低くて実直な倉庫主任の田村さん写真)は知らないと言うのだが、どうやら最近、増田という怪しい男(天知茂)と羽振りよく遊んでいる姿が頻繁に目に付く販売課長の佐々木(並木一路)が怪しい。

佐々木の脅しに屈せずに調べを進めた光一は、たまたま田村さんの留守中に机に入っていた老眼鏡を掛けてみて、それが伊達メガネであることを発見。そして帳簿を見て確信する。田村さんと佐々木はグルだ!

「おい水島、おめえのガン付けしたとおりよ」
詰問された田村さんはガラッと態度を変え、おもむろに口髭を取り眉を取りカツラを外す。そこにいたのはなんと増田。乱闘の末、ナイフや銃を持ってる連中を素手でノックアウトした光一は会社を救い、社長令嬢のみゆきさん(高倉みゆき)とゴールインするのだった(という部分はどうでもいい)。

*あまりに地味な登場シーン(写真)と極上の爺さん演技にまんまと騙された。見た目の風格はともかくセリフ回しがまだ軽い増田より、田村さんの喋くりの方が自然に思えたくらいだ。

*子分たちから“おやっさん”と呼ばれ、おねーちゃんたちを従えてワルの貫禄十分な増田だが、自分で変装して横流しを指示しているマメさがいかにもで微笑ましい。

*いけてる(?)増田の画像集:
おねーちゃんにネクタイ直してもらってる図
バレそうで焦る佐々木の小物ぶりを鼻であしらう図
「俺はね、涙もろいんだぜぇ?」椅子に逆向きに座り、泣きの入った佐々木を眺める図
ワルですと言わんばかりの顔でピストルを構える図

(おまけ)この身長差で殴り合っておりました

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=106 |
| 映画::新東宝 | 04:08 PM | comments (x) | trackback (x) |
『宿無し犬』
『宿無し犬』(1964年・S39)

ハジキと喧嘩は滅法強いが、女に弱いお調子者の一匹狼・鴨井大介(田宮二郎)は、高松にある母の墓地をゴルフ場に変えた大興組とひと悶着。そこを彼らのライバル、沼野観光社長(佐々木孝丸)に見込まれ神戸にやってきた。

沼野の店が火事になり、その保険金を受け取った帰り道、鴨井の前に奇妙な不精髭男(天知茂)が現れた。「君のボディガードや」抜け抜けとそう宣言した不精髭は彼の後を尾けてくる。ちょうどその時、高松で出会った大興組と訳ありの美女・麻子(江波杏子)に遭遇するのだが、不精髭はなぜか彼女と関わり合いになるなと言い「そのうち火事見舞いに行くからな」と不可解な台詞を残して消えた。

そんな折、鴨井がナイスバディの柳子(坂本スミ子)と働いていた沼野所有のモーテルが放火された。予告通り焼け跡に、しょぼくれたコートの不精髭が姿を見せる。沼野の保険金詐欺をほのめかした彼は、飯場にいた鴨井を銃器不法所持で引っ張ろうとした。「お前、デカやったんか!」

捜査一課の刑事・木村準太(改めて天知茂)は鴨井に、(うどんと麻子の居場所をエサにして)沼野と青井(水島道太郎)の線を洗ってくれと持ちかける。青井というのは沼野の片腕で、鴨井の良いハジキ仲間だったが、モーテルの保険金を持ち逃げして大興組に匿われた男(それはすべて沼野との策略だったのだが、大興組は青井をゲットすると沼野を射殺し、結局寝返った形になっているややこしい男)。同僚を青井らしい男に消された木村は、なんとしても青井の身柄を確保したいのだと言う。鴨井は麻子会いたさに渋々協力することに。

鴨井がホの字の麻子は、大興組の康市(五味龍太郎)の女とみられていたが実は彼の姉だった。康市は姉の身の安全のためそれをひた隠しにしていたものの、お前には出来すぎた女だから青井に譲れと組長の佐伯(須賀不二男)に命じられて苦悩。麻子を連れて逃げようとしたところを組員の瓜生(デビュー作?:成田三樹夫)たちに襲われ、ついでに事情を知らない鴨井にも追われて海へドボン。翌日浮かんだときには死体になっていた。

実際は組員たちのドスを喰らっての刺殺だったが、鴨井の前以外では俄然キレものぶりを発揮する(しかも標準語に切り替わる)木村は、沼野の出方を探ろうと“水死”として発表させた。おかげで自分が麻子の大事な男を殺してしまったと落ち込む鴨井。しかし、連れて逃げた麻子と木村の言葉から真相を知った彼は、康市の骨でひと儲け企んでいた沼野から骨を奪い返すために、青井とのサシの勝負を決意する。

サシのはずなのに沼野やらミッキー瓜生やらが押しかけ乱戦になり、青井は味方サイドにやられて死亡。残りを単身でやっつけた鴨井の背後から、パトカーのサイレンが聞こえてきた。逃げて、と抱きつく麻子を「アイツ(=木村)の月給あげたらなイカン」と諭した鴨井は、木村の手錠を潔く受けるのだった。

*“犬シリーズ”第1弾ゆえか、途中から妙にシリアスで湿っぽい展開になってしまい、鴨井のあっけらかんとスカした魅力が花開いていないのが残念。とはいえ、“しょぼくれ”(とは1作目では呼ばれていないが)こと木村刑事の懐深いキャラは最初っから全開である。ふらりと姿を見せて「俺は君(=鴨井)より色男やと思ってるんやが」(ほんとにそう思う←贔屓目)なんて言いつつ鴨井をやんわり手玉に取り、タイヤを頭から被らされて逃げられてもヤンチャ坊主を見る優しい目で見送っていたかと思うと、本業では眼光鋭くキレ者。刑事としては会田@非ライより優秀なんじゃないかとさえ思えてしまうその余裕のある態度が、ルックスと相まって実に魅力的だ。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=14 |
| 映画::大映with田宮二郎 | 11:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
愛の誤算
スター劇場 「愛の誤算」(1970年・S45・1月6日〜3月3日OA:全9回)MBS 22:00-23:00
原作:三浦綾子「自我の構図」
出演(#1):司葉子、天知茂、野川由美子、近藤洋介、ジュディ・オング、荒木雅子、寺尾聡、志村喬、曾我廼家明蝶、安藤孝子

【夫の死に抱く未亡人の疑惑】
夫の突然の死による妻の悲しみ、その死因の疑惑をこえて、夫の友人への思慕、しゅうとめの冷たい態度など、美しい未亡人をめぐる愛憎の波乱を描く。原作・三浦綾子。
日本画家藤島曽吉(近藤洋介)は、画壇の集団蒼竜会の同人に友人の石南慎一郎(天知茂)が選ばれたのを怒り、海岸のがけの上で石南といい争ううち、曽吉は敗北感にうちのめされて自分から荒海に身をおどらせた。
慎一郎の報に、曽吉の妻美枝(司葉子)は疑惑にとらわれた。

夕刊あらすじ:日本画のライバル曽吉と慎一郎が争い曽吉がナゾの死。未亡人美枝らは慎一郎を犯人と思う…。

(読売新聞)前のシリーズと趣をかえ、サスペンスの要素を盛り込んだアクチュアル・ドラマ。三浦綾子の原作のドラマ化で、一人の男の死因をめぐるナゾ解きというミステリックなストーリー展開に、愛と憎しみに悩む人間の姿がからまって、現代の複雑な人間模様が浮きぼりにされていく。

#2(1/13)
脚本:辻久一
出演:司葉子、天知茂、野川由美子、ジュディ・オング、荒木雅子、志村喬、安藤孝子、曾我廼家明蝶、上本薫

【夫の死因を疑う妻】
画家の曽吉が行方不明となった数日後、ひとつの死体が海岸で見つかり、遺品から曽吉と確認された。警察では自殺として処理したが、妻の美枝(司葉子)、母の松江(荒木雅子)、妹直子(ジュディ・オング)らは「慎一郎がつきおとしたのでは…」という疑いを抱く。慎一郎(天知茂)は美枝を訪ね「自殺をとめられなかったおわびとして力になりたい」と画商から借りた金を差し出した。

(写真キャプション)慎一郎は美枝たちの生活を心配、香典に大金を渡す(仏前に座って司葉子さんと対峙する天っちゃん、左には彼から顔をそむけて立っている荒木雅子さん)

夕刊あらすじ:曽吉は自殺と断定された。母松江は慎一郎を告訴するという。慎一郎を信じようとする美枝。

(読売新聞)曽吉の遺がいが見つかった。岩礁と荒波にもまれて顔はよくわからないが遺品から曽吉と確認された。一人娘美津子を残され、未亡人となった美枝(司葉子)と曽吉の母松江(荒木雅子)、妹直子(ジュディ・オング)がかけつけ、ダビに付した。警察では自殺として処理されたが、美枝ら遺族は「慎一郎が突き落としたのでは……」といういちまつの疑惑をいだく。

#3(1/20)
出演:司葉子、天知茂、野川由美子、ジュディ・オング、寺尾聡、荒木雅子、安藤孝子、曾我廼家明蝶

夕刊あらすじ:夫の死因に悩み抜く美枝。宮永を通じ福島家(*藤島?)へ援助を続ける慎一郎は宮永の注文通りに描く。

(読売新聞)【解き明かされぬ真相】
夫の死因について悩み抜いた美枝(司葉子)は、慎一郎(天知茂)をたずね、曽吉が死ぬ前に書いた日記を見せて真相をただす。しかし、慎一郎は「藤島君がぼくをうらんでいたのは事実です。理由は今はいえない」と答えるだけだった。美枝はますます、慎一郎を曽吉がにくんで自殺したのか、慎一郎が曽吉を殺したのか分からなくなる。

#4(1/27)
出演:司葉子、天知茂、野川由美子、ジュディ・オング、寺尾聡、荒木雅子、志村喬、曾我廼家明蝶、安藤孝子

【遺品の画集に気になる言葉】
美枝(司葉子)は、宮永(曾我廼家明蝶)の強引なすすめで彼の画廊で働くことになる。そして一番大事にしていた曽吉の遺品「美枝の肖像画」を宮永にくどかれ、画廊に非売品として飾ることにした。ある日、曽吉の遺品を整理していた美枝は、画集の裏に“くたばれ石南、死”と書きつけてあった。やっぱり曽吉は慎一郎(天知茂)を憎んでいたのだろうか。

夕刊あらすじ:宮永の画廊で働く美枝は夫の出世作も譲る。夫の死のなぞの解けぬまま慎一郎を愛し始める。

#5(2/3)
出演:司葉子、天知茂、野川由美子、ジュディ・オング、寺尾聡、荒木雅子、曾我廼家明蝶、上本薫、柳原久仁夫

夕刊あらすじ:曽吉らしい人を松本で見たと言われ、美枝は自分で確かめようとするが、直子がケガをし断念。

#6(2/10)
出演:司葉子、天知茂、野川由美子、ジュディ・オング、寺尾聡、曾我廼家明蝶、上本薫

夕刊あらすじ:美枝と慎一郎は偶然に松本で巡り合う。そして胸に秘めていた愛の言葉を初めて告白しあう。

(読売新聞)【無理が重なり肺炎に】
美枝(司葉子)は、死んだはずの夫の姿を見たという知らせを聞いて松本へ向かった。しかし、夫らしい人物を見つけることはできなかった。美枝は疲れと寒さが重なり急性肺炎になり、病床で慎一郎(天知茂)の名を呼びつづけた。そのころ慎一郎は、松本の近くの宿にいたが、電話で美枝の話を聞き、彼女のもとへかけつける。

(写真キャプション)美枝は松本で偶然慎一郎にめぐり会い、愛を告白する(傘をさして向かいあうふたり)

(夕刊)美枝と慎一郎は偶然松本でめぐりあい、二人は一生で一番幸福な時間をすごす。そして今まで胸にひめていた愛の言葉をはじめて告白しあう。

#7(2/17)
出演:司葉子、天知茂、野川由美子、志村喬、寺尾聡、荒木雅子、曾我廼家明蝶、上本薫

【みにくいキバ】
病がいえた美枝(司葉子)を待ち受けていたのは画商文七(曾我廼家明蝶)がたくらんだ“慎一郎鉄斎盗作”の悲しいニュースだった。美枝が松本で慎一郎と一緒だったのをしゅうとめ(荒木雅子)にいいつけたのも文七。その笑顔の裏には男のみにくいキバがかくれていた。

夕刊あらすじ:画商文七が慎一郎の盗作事件をでっちあげ、沈黙を守る慎一郎を救うため純子の悲しい決意。

(読売新聞夕刊)慎一郎との楽しい思い出もつかの間、美枝は“慎一郎盗作事件”のニュースを聞く。一方、純子は慎一郎を助けるため自分を売ろうとする。

#8(2/24)
出演:司葉子、天知茂、野川由美子、志村喬、ジュディ・オング、寺尾聡、曾我廼家明蝶、安藤孝子

夕刊あらすじ:宮永の策謀を知った美枝は慎一郎の潔白を証明させる。曽吉遺作の美枝の肖像は慎一郎の作品。

(読売新聞夕刊)美枝(司葉子)は画商宮永のたくらんだ“慎一郎盗作事件”の真相をあばく。一方、慎一郎(天知茂)は画家として新しく出発する決心をする。

#9(終)(3/3)
出演:司葉子、天知茂、野川由美子、近藤洋介、ジュディ・オング、寺尾聡、荒木雅子、斉穏寺忠雄

夕刊あらすじ:美枝と慎一郎は新しい人生を夢みるが、曽吉は生きていた。堕落した曽吉へ憎しみ消える二人。

(読売新聞夕刊)結婚を約束した慎一郎(天知茂)と美枝(司葉子)だったが、美枝の夫が生きていることがわかった……。
(以上、朝日新聞・読売新聞より記事引用)

*友人の陰湿なジェラシーで人生が大きく狂う画家の役。画家ってことは絵も描いたのだろうか? “曽吉が生きていた”という展開は原作にはないので、ドラマの収束の仕方も気になるところだ。

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| TVドラマ(現代劇)::その他(シリーズ) | 10:05 PM | comments (x) | trackback (x) |
文五捕物絵図 #12
「武州糸くり唄」 (1967年・S42・6月30日OA)

放送ライブラリ@横浜にて鑑賞(2007年5月5日)。

暑い夏の最中、とある家の様子を何日も見張っている岡っ引きの文五(杉良太郎)と下っぴきの丑吉(露口茂)・矢七(常田富士男)。この家に住む後妻・お冴(岩崎加根子)は、内偵与力を殺めて逃走中の蘭学者・立木仙三(うらぶれた浪人風体の天知茂)の初恋の相手であり、妻に見捨てられ行くあての無い彼が立ち寄る場所はここしかないと文五は睨んでいたのだ。

*殺人の経緯は#11「鴉」に詳しいようだが、残念なことにライブラリにはこの1話しか収録されていない

大店の番頭のくせにドケチな夫や小憎らしい先妻の娘の仕打ちに黙って耐えていたお冴の元に、立木からの文が密かに届けられた。『お冴、…お冴!』立木の悲痛な叫びが聞こえそうな(実際天っちゃんの押し殺した低音ボイスがこだまする)その文を読んだ瞬間、堪えていたものが彼女の胸に一気に突き上げる。

文五たちの眼を盗んで逢瀬の場所へと駆けつけたお冴は、安宿へと立木を誘う。身分の違いを越えられずに彼女を捨てたことを詫びる立木に、初めて会ったときからずっと貴方を待っていました、結婚すると告げられても、自分が嫁ぐことになったときも、理由が分からないまま、ずっと待っていました、そう打ち明けるお冴。鎖国の世に密航を企てる秘密結社にいた(らしい)立木は、彼女を引き寄せ呟く。「(仲間が密航を画策する)部屋の隅でひとり刀を抱きながら、俺は思っていた。エゲレスまで行けなくてもいい、無人島まででいいと…ふたりだけでひっそりと暮らせる島へ行ければそれで十分だと・・・」

しかし、文五や立木の友人の医師・草太郎(和崎俊也)が二人に迫っていた。湯から出たところを捕縛された立木は、番屋への道すがら、草太郎の脇差を奪い自らの腹を突いて果てた。立木のことは忘れるよう文五に説得されたお冴は、翌日から再び貞淑な妻の仮面をまといながらも、放心したように糸を繰るのだった・・・。

*何事も起こらぬまま、夏のうだるような暑さと文五たちの焦りがシンクロしている前半、そして緊張感が一気に高まりクライマックスへとなだれこむ後半のメリハリが素晴らしい。特に立木とお冴の逢瀬シーン、自ら立木の胸に飛び込み彼の指(これがまた長くて白くて繊細でキレイな指なのだ)を咥えるお冴、もう片方の腕で肩を抱き、彼女を愛しそうに、切なそうに見つめ続ける立木の表情は必見(演出:和田勉さん)。前半は、ドタドタとセット内を歩く音が丸聞こえだったりでかなり画像や音の状態が悪いのだが、アップ多様でひたすら男女の機微を魅せてくれる頃になると全く気にならなくなった。

*一緒に無人島へ行こうなんてファンタジックな誘いをかけてくれた男のことを忘れられるはずないだろうなあ。

*さすがの杉さまも当時は若くて(=青くて)初々しい。ちなみに天っちゃんはローン・ウルフの頃だけあってセクシー路線全開である。

(2009.1.22追記)「武州糸くり唄」と前編にあたる「鴉」が収録されている本(「倉本聰コレクション9 文五捕物絵図 (1)」)を読んだ。

母親のスパルタ教育を受けた優等生の立木は、長崎留学枠を巡って草太郎に負けて以来がらっと変貌、妻のお涼(鳳八千代)に暴力を振って追い出し、勉学にもついてゆけず蘭学塾の用心棒になり下がっていて、塾を内偵中の与力を止せというのに殺めたらしい。で、追い出したお涼の家に転がり込んでお互い憎しみ合いながら暮らしていたのだが、殺した与力の目明し・銀次(浜村純)にかぎつけられてしょっぴかれそうになるところを、立木を憎んでいたはずのお涼が銀次を刺して庭に埋め、その屍に鴉が集まってきて発覚、という筋書きが「鴉」。「母の言うなりになってお前(=お涼)なんか嫁に貰わなきゃよかった、俺にはお冴という初恋の人がいたんだ!」とか言ってお涼を虐めるヤな奴だが(マザコンだったようだし)、土壇場でお涼さんにも、友人の草太郎にも助けてもらえる“放っておけないオーラ”が出ているとみた。

「武州…」はほぼ脚本通りにドラマが展開していた(映像の方が立木がいい男に見えるのは贔屓目か)

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大奥(1983)#34
「陽気な未亡人」(1983年・S58・11月22日OA)

八代将軍になった吉宗(鹿賀丈史)の母ゆり(=浄円院:山田五十鈴)と嫁(側室)のたえ(斉藤慶子)が梅干し持参で大奥を訪れた。場所柄構わずカントリースタイルを崩さない二人は大奥の庭を耕して畑にする始末。困惑する月光院(江波杏子)の頼みで偵察に訪れた間部(トメ位置奪回:天知茂)は、自ら野良作業に勤しむ吉宗に不穏な胸騒ぎを覚えた。「あの汗が、怖い…」

覗き見するデカダンスなふたり(=月光院&間部)の存在は、ゆりと吉宗に気づかれていた。「あの男(=間部)が側にいては、月光院さまの切り髪もけがれ果てようのう。お気の毒なことや」(いやどっちかというと彼女の魔性が原因なのだが)母の呟きに、吉宗は近々決着をつけると約束する。

間部は天英院(加賀まりこ)に、吉宗を大奥へ誘う骨抜き作戦を暗に促すのだが、今回ばかりは吉宗の対応の方が素早かった。彼は大奥に自分の許可なく男子が入ることを固く禁じたばかりか、側用人の役職を廃止する、と宣言したのだ。万事休した間部は、がくりと頭を下げるしかなかった。

この命令に当然憤った月光院は吉宗に詰め寄ったものの、「二人とも人の手本とならなあかんお人やさかい…ふっつり諦めなされ」とゆりに諭される。想いがあるうちに断ち切った方が、後の生きるよすがになる――ゆりの言葉を噛みしめる月光院。

一方、側用人から雁間詰に配置換え(左遷)させられ陰鬱がどんより増していた間部はある日、周囲の反対を押し切って大奥に入り、所領の高崎に戻らせてほしいと吉宗に直に申し出て許可を貰う。健在で、と言う吉宗に「かつての名もなき能役者めよ、と白い目を向けられ続けた越前の引き際、とくとご覧下さりませ」とひとさし舞おうとして振り向くとそこには涙目の月光院が。「月光院様にもお健やかに…想いを抱き、消え失せまする」それだけ言って「船弁慶」最後の部分(弁慶舟子に力を合せ〜)を舞いながら(謡は吹き替え)、間部は厳かに退場してゆくのだった――。

(このあと月光院も吹上御殿へ移り、紀州ファミリーとの微笑ましい交流のあとで“陽気な未亡人”・天英院もまた別れの舞を舞って退場するところまで続くが、ワタシ的にはここがセフィニ〜♪

*“金襴緞子から木綿の世界に”をポリシーに質素倹約を敢行する吉宗に完敗、とうとう画面上から姿を消してしまう間部。往生際悪く足掻く事すら潔しとしない、エベレスト級自意識の持ち主らしい壮麗な引き際だった。

*大奥改革を終え、紀州親子が「さっぱりしましたな」と言い合っていたが、たしかに間部&月光院の濃密といおうかいかがわしさ全開といおうか、大層おどろおどろしいコンビがいなくなると雰囲気がガラッとライトに変化していた。

*能役者といえば翌年(1984年)の「真夜中の鬼女」(能役者・宗山役)、いつかぜひ見てみたい。原作はもしや泉鏡花の「歌行燈」なんだろうか?

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大奥(1983)#33
「吉宗と肝っ玉母さん」(1983年・S58・11月15日OA)

幼君・家継が風邪をこじらせ病の床に就いた。我が子を案じ心乱れる月光院(江波杏子)に「人の命は一寸先は闇。今この越前とて、この場において命を落とすやも…」と不穏な口をきく間部(天知茂)は、万が一に備えて次の将軍の人選を考えておかねばとあくまで冷静。そして二人の意見は「紀州の吉宗だけは願い下げ」で一致した。特に、誰もが一目置く自分に廊下で頭を下げさせ道を譲らせた吉宗(おまけにクレジットのトメ位置までも略奪:鹿賀丈史)に対して、間部は反感を抱いていたのだ。

「あの男が八代様になっては、わしの夢が崩れる…この手から天下の権が零れ落ちる…」
昏い憎悪の眼差しを燃やす間部、その胸に月光院はぴっとり寄り添うのだった(子供が心配でも魔性が勝ったらしい)。

将軍後見職(=次の上様)を決めるために徳川御三家の長を呼び出し、老中たちは喧々囂々。間部のイチ押しは尾張大納言・徳川継友(堀内正美)なのだが本人が今一つぴりっとせず、年嵩の水戸の綱条(佐竹明夫)は副将軍で充分という。そして紀州の田舎を駆けていたそのままの質素な格好で母ちゃん(山田五十鈴)と茶屋で見初めたヨメ(斉藤慶子)を連れて上京した吉宗は、皆の意見に従うからといって別室へ引っ込んだ。

その吉宗にさりげなく毒入り茶を届けさせた間部だが飲んでもらえず目論見は失敗。月を見上げている吉宗の背後を通りかかり、頭の影をむんずと踏もうとした時にもさっとかわされ、またもやムカッときた間部は「始末せよ。ただし、殿中ではならぬぞ…」 と黒装束で軒下にいた助川(毒入り茶を持って行った茶坊主もばっさり始末:宮口二郎)に吉宗暗殺を命じるのだが、吉宗シンパの紀州黒潮隊(内田勝正ほか)らの妨害に遭いこちらも未遂に終わった。

一方、六代将軍の正室・天英院(加賀まりこ)は、間部が継友を推しているのを知って阻止せんと家宣の遺言書まで偽造した右腕の綾小路(南美江)の頑張りに応えるため、地位を利用して吉宗プッシュに回る。母の言に従い欲を捨てていた吉宗だが、「大奥の費用(三十万両)を半分にしたら後見職を引き受けると言ったわよね!」と彼女に突っ込まれ引き受けることに。

土壇場で逆転された間部は「月光院さまの御意向も受け賜わらねば!」と急ぎ立つが、その瞬間、しゅたっと手裏剣を足元に投げつける吉宗(実は畳を滑っていったが、次のカットではちゃんと刺さっていた)。それは助川たちが襲撃に使っていたものだった。「動くまいぞ、越前!」だが一瞬“畜生バレたか”という顔をしたものの、間部はすぐに懐紙に手裏剣を載せて吉宗に差し出し、ポーカーフェイスで相手を直視。「恐れながらここは殿中、このようなもの、お納めあってしかるべきかと存じまする」

息詰まる場の空気を変えたのは、家継臨終の知らせだった。これにより吉宗は次期将軍に。葬儀の段取りでも質素倹約を持ち出し、棺が何の変哲もない白木であることに怒り心頭の月光院は吉宗をぶちのめしに向かうが、逆に諭されて泣き崩れる。それをじっと見ていた間部は、黙って奥へと引き下がるのだった。

*カントリー精神と和歌山弁を江戸に持ち込んだ自然児・吉宗に、相変わらずの澱んだオーラで対抗する間部。あからさまにヒールな挙動を繰り返していたにも関わらず、嫌味や開き直りを超越した表情で吉宗に対峙してのけた手裏剣シーンはすごかった。なんでそこでそんなカッコいい顔ができるんだ!

*山田五十鈴さんとの共演は『風雲金比羅山』以来だと思うが(というか、あれは共演とは言わないだろうが)、あいにく今回も絡みはなかった。

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大奥(1983)#32
「永遠の処女」(1983年・S58・11月8日OA)

(冒頭、#31の禁男の園の濃密シーンなどが微妙に別アングルで回想されたあと)将軍生母として権力を誇る月光院(江波杏子)と男の壮麗な野望を達成した間部(天知茂)の蹴落としを図らんとする老中一派の謀略により、月光院の右腕・絵島(神崎愛)や宮路(加茂さくら)たち十数名は芝居見物・役者との乱交の咎で大奥を追われ、絵島を真剣に愛してしまった生島新五郎(田村亮)もまた罪人となった。

ショックを受け、老中に糺しに行かんばかりの月光院だが、この見え透いた陰謀のターゲットが自分たちだと勘付いた間部は自重を促す。彼には、得意の眼力で生娘とみた絵島がそう簡単に男と情けを交わすとは思えなかった。ここで騒いでは藪をつついて蛇を出すことになる。「秘すれば花、秘さざれば花ならず。この花を知っているのは絵島ただ一人…」絵島も心配、しかし自分たちが夜ごと臥所を共にしていることがバレるのはもっと心配。不安そうに背後からぎゅうっとしがみ付いてくる月光院の手を、間部はしっかりと握り返した。

牢に繋がれ、関根(菅貫太郎)らのネチっこい拷問を受け続けた絵島は、ついに譫妄状態となり胸に秘めた新五郎への愛を口にするようになる。しかし秋元但馬守(綿引勝彦)や土屋相模守(林彰太郎)ら老中が最も知りたかった月光院&間部の逢瀬のことは一言も漏らさずじまいで、とうとう死罪を言い渡されてしまった。

ところが、二人の老中は「絵島の命を助けてやれというのに間部は聞いてくれぬ!」と間部にむずかりハンストする上様を目の当たりにし(させられ)、間部と月光院が最後の切り札を出してきたことを悟る。かくして絵島は減刑され遠投、生島も三宅島へ流されることに決まった。

別々の土地へ流されるふたりにせめて最後の逢瀬を、との懇願に渋い顔をしたままの間部に「そなたには小伝馬町の牢役人を動かすほどの力もないのか!」と詰め寄る月光院。「そなたは近頃、我が身の保身ばかり考えておる。人は頂上にのぼりつめると、失うものを惜しむばかりのいじきたないブタになるものじゃな!」明智ばりの冷静さを保っていたもののさすがにカチンときた間部は月光院の手をぐっと掴んで引き寄せたが、途端にヘナヘナとしなだれかかり、泣き落としにかかった彼女の魔性には逆らえなかったようで、便宜を図ってやるのだった(籠に幽閉されたまますれ違う絵島と生島の哀しい別れでセフィニ〜♪)

*いってみれば自分たちの代わりに絵島&生島が罰せられたわけだが、懲りるふうでもなく濃厚に密着していたコワモテ・カップルであった。

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