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『憲兵と幽霊』
『憲兵と幽霊』(1958年・S35)

鹿島茂著「甦る昭和脇役名画館」(横目な色悪/天知茂)などで絶賛されている作品を、新文芸坐の大スクリーンでようやく鑑賞。かなり“雨降り”がひどく音や映像がばしばし飛ぶのが残念だったが、キーンと耳障りな金属音BGMが不快感を煽り、雰囲気は十二分に掴めた。

ゲットしそこねた女・明子(久保菜穂子)の祝言を、勝負はこれからとばかりに横目で舐めるように見つめる波島憲兵(少尉から中尉へ:天知茂)。彼には中国側のスパイという裏の顔がある。気の毒な旦那・田沢伍長(中山昭二)に自分の濡れ衣を着せ、妻や母ともども激しい拷問にかけた揚句に銃殺刑に処す冷酷非情ぶりを見せた波島は、邪魔な田沢の母を自殺へ追いやり、とうとう明子の体を奪って目的を達成する。

しかし、顔に似合わずえげつない呪いの言葉を吐いて死んだ田沢に瓜二つの弟(中山二役)がなけなしの良心をチクチクと刺激する上、濡れ衣の共犯である部下が造反、思わず刺してしまい行李に突っ込んで海へ投げ込む羽目になる頃から、波島の悪運は尽きようとしていた…。

実はこの映画の不思議な面白さは、『悪いヤツが幽霊におびえて自滅する』という典型的お化け話と並行して、ピカレスク・ロマンというべきもうひとつの物語が展開しているところにある。三原葉子ねえさん演じる紅蘭との儚いラブ・ストーリーがそれだ。

祝言の日、たまたま酔漢から助けた紅蘭は、自分が通じる中国側の取引相手・張覚仁(芝田新)の愛人。父が自殺し云々という不幸な波島の過去を知った上で真摯な同情のまなざしを向けてくる彼女に、明子へのサディスティックな態度とはうって変わった深い愛情を返す波島。そんな二人に張は当然ジェラシーに燃え、こっちでも波島は万事休すと相成る…のだが、一見作品の主題を散漫にしているようなこのサイド・ストーリーがあるが故に、墓地での進退窮まった波島の狂乱ぶりに重みが増しているように思うのだ。

蛇のような粘着質憲兵が似合いすぎていて、紅蘭との絡みではまるで別人にみえるという難点もあれど、単純ではない悪人をいつもながら真剣そのもので演じ切っている天っちゃんに拍手。

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| 映画::新東宝 | 11:17 PM | comments (x) | trackback (x) |
『地獄』
『地獄』(1960年・S35)

教授の娘・ユキコ(三ツ矢歌子)と結婚間近の大学生・清水四郎(前髪が大学生?:天知茂)。勝ち組の割に顔色が冴えないのは、怪友・田村(沼田曜一)と起こした偶然の事故でチンピラ・恭一(泉田洋志)を轢き殺してしまったからだ。良心の呵責に耐えきれずユキコに相談、自首しようとする四郎だが、乗ったタクシーが衝突してユキコが死亡。自暴自棄となって寝た女・洋子(小野彰子)は恭一の情婦で、復讐に燃える恭一の母(津路清子)と彼女に命を狙われる羽目に。

ハハキトクの電報で故郷に帰ってみると、胡散臭い養老院を経営している父(林寛)は病の床に伏せる母の隣で二号(山下明子)とよろしくやっている。絵描きの父と暮らす、ユキコにそっくりなサチコ(三ツ矢さん二役)という娘の存在だけが清涼剤だが、娘の死で狂った妻を抱えた教授、田村、そして洋子たちが乗り込んできて芋蔓式に不幸が四郎に覆いかぶさり、運命が狂い始める……。

……このあと登場人物すべてがばったばったと死んでゆき、めくるめく地獄ツアーへと話が展開していくさまは圧巻かつ強引すぎて笑いがこみあげてくるほど。とりあえずどこの世界にいてもビクつきながら「俺が悪かった、許してくれ〜!」と謝りまくっている四郎は、死んでなお「殺してやる!」と首を絞められる上に「四郎、俺と一緒に来い!」だの「四郎さん、助けてー」「もう離さないわ〜」だのと男女関係なく迫られる人気モノだった。

*地獄で長丁場のキスシーンをやってのけるツワモノでもある<四郎

*この映画のメフィストフェレス・田村を演じた沼田さんの恐るべき怪演はトラウマ必須。

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| 映画::新東宝 | 11:16 PM | comments (x) | trackback (x) |
『花と波濤(波涛)』
『花と波濤(波涛)』(1954年・S29)

職業婦人を目指して岡山から京都へやってきたひとりの女性・紀代子(筑紫あけみ)の“近代人”らしい恋愛模様を描いた作品。

故郷の幼馴染で文学青年の司(山内明)と京都の大学で考古学を研究する大槻(岡田英次)の2人から求婚された紀代子だったが、内気な司に対して積極的すぎる大槻、どちらも彼女には一長一短で決められない。揺れる胸の内を、京都で偶然知り合った年上の彫刻家・真崎(上原謙)に相談するが、彼もまた、離婚寸前の妻(久慈あさみ)と昔の恋人で今はパトロンの夫人(高杉早苗)の間で板挟みになっていた。

こんなラブロマンス映画のどこに天っちゃんが出てくる余地があるんだ、もしや第3のフィアンセ候補なのか? とはかない望みまで持ちつつ(そもそもクレジットで「天茂」となっているあたりから存在の希薄さが出ているとはいえ)1時間30分ほど見進めてみると、紀代子と喧嘩別れしかけている大槻の元へ「先生、文化賞受賞おめでとうございまーす!」云々とうわずった声でわらわらと部屋へ駆け込んでくる詰襟姿の大学生・その1(計3人)として登場。どうやら大槻のゼミ生らしい。誕生日前の22才だから学生姿でもおかしくはないが、老け顔(やつれ顔?)のせいでなんか違うんだよなあ感がそこはかと漂っている役柄ではあった。

*学生クンの出番はこれでおしまい。ストーリーの方は、久慈さんと山内さんが実は知り合いで、ってな唐突な展開を除くと、波乱はあれど予定調和な“二兎(この場合は三兎)を追う者、一兎をも得ず”的な結末を迎えていた(大槻さんはまだ脈アリかもだが)。

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| 映画::新東宝 | 11:15 PM | comments (x) | trackback (x) |
『大東亜戦争と国際裁判』
『大東亜戦争と国際裁判』(1959年・S34)

前半は太平洋戦争のダイジェスト、そして後半は東京裁判の全貌と東条英機(嵐寛寿郎)らの処刑までを描いた作品。例のごとく淡々と流れてはいくものの、連合国側の検事が見るからにイヤミな感じで、アラカンさんはいつも通り説得力に満ち溢れていたりするせいで、理不尽な法廷だったんだなあと心底思ってしまう展開になっていた。絞首刑執行のシーンが胸に重苦しく残る。

さて天っちゃんの役柄はクレジット(4順目)によれば戦艦大和・副長。昭和20年4月、特攻作戦に赴く途中の艦上が映るシーン(本編開始約20分後)に初登場するのだが、副長にしてはなんだか隅に追いやられており画面右端)、アップになっても(画像)激戦地で虫喰ってた一兵士(『潜水艦ろ号未だ浮上せず』)とたいして変わらないような風貌であった。

*この後、一言のセリフも貰えないまま大和はあっけなく撃沈されてしまう。しかし実は大和の副長(能村次郎氏)は生き残っておられ、新東宝の『戦艦大和』の教導もしてらしたそうである。戦争映画での死亡率は意外に低い天っちゃんだ。

*東京裁判シーンなど、基本はカラーだが、太平洋戦争のシーンはすべてモノクロ。

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| 映画::新東宝 | 11:13 PM | comments (x) | trackback (x) |
『明治天皇と日露大戦争』
『明治天皇と日露大戦争』(1957年・S32)

斜陽の会社を(一時的に)救った、初のアラカン天皇物にして大ヒット作。開戦からバルチック艦隊壊滅までの道のりが明治天皇(嵐寛寿郎)を軸にしたドキュメンタリー・タッチで描かれており、悲劇的要素が強い史実を、お涙頂戴ドラマに偏りすぎることなく淡々と映像化しているあたりにリアルさが感じられた。

前回見た日清戦争(『天皇・皇后と日清戦争』←製作年は1年後)同様、宇津井健は海で豪快に、高島忠夫は死亡フラグを立てまくりながら陸で戦死、丹波哲郎はどこかエラそうな海軍将校、細川俊夫はアラカン天皇の忠実な侍従長だったのだが、下関会議の邪魔をしたもみあげ狙撃犯(=天っちゃん)はというと、開始5分ほどで両腕を大きく広げて(長い指先がステキ)「二千年の歴史を守れー!」などと屋外で群集をアジっている背広姿の代議士センセイ(やはり明治なロングもみあげ&お髭付き)のひとりであった。出番がなかなか回ってこないのも困るが、2時間あまりの超大作でこんなに速攻で出てこられても後を見る気力が萎えるので考えモノである。

*代議士センセイが出席していそうな国民大会の様子が途中に何度も挿入されているが、壇上に座っていそうでいないあたりがもどかしかった(それにしても、ものすごい人数が画面にあふれている映画だ!)

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| 映画::新東宝 | 10:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
『天皇・皇后と日清戦争』
『天皇・皇后と日清戦争』(1958年・S33)

若いときから傲岸不遜な丹波哲郎のせいで(おい)交渉決裂、日本は清国と開戦。農村に年老いた婆ちゃんひとりを残して高島忠夫が死亡フラグをがんがん立てながら出兵、海では宇津井健が豪快に吹っ飛び、寒い陸地では中山昭二や和田桂之助がバタバタ倒れる一方、神々しいアラカン天皇&高倉みゆきが下々の者たちと心の交流を図るオールカラー超大作。

目を凝らすこと1時間30分後、下関で講和談判中の清国全権大使・李鴻章(勝見庸太郎)の一行を鋭い目つきで睨みつけるロングなもみあげの男・小山六太郎(天知茂)が登場。ふところから銃を取り出しやおら李氏の輿に駆け寄った小山は銃をぶっ放す。弾は李氏の顔面を直撃、小山はただちに取り押さえられ「李鴻章を倒すんだ〜っ!」と叫びながらフェイドアウト。あとすこしで平和裏に条約が締結できるという時だっただけに、日本サイドはこの浅薄行為に大迷惑。温和なアラカン天皇にさえ「犯人は厳罰に処すべし」と言われていた。

厳罰ってどんなのだろう、銃殺刑?磔獄門?などと色々コワイものを想像してしまったのだが、史実によれば小山(史実には「六之助」とある)は無期懲役で網走に送られた後、恩赦で出所、獄中での体験記(「活地獄」)をしたためた上に昭和の時代(78歳)まで長生きしたのだそうだ。

*なお彼の手記と夏目漱石の「坊ちゃん」を融合させた「牢屋の坊ちゃん」という小説(山田風太郎著)があるようだ(「明治バベルの塔―万朝報暗号戦」に収録)。たしかに坊ちゃんチックな風体だった(もみあげ長いけど←そればっか)

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| 映画::新東宝 | 10:53 PM | comments (x) | trackback (x) |
『天下の鬼夜叉姫』
『天下の鬼夜叉姫』(1957年・S32)

将軍綱吉のご時世。豊臣方の生き残り・鶴姫(宇治みさ子)たちは曲芸一座に身をやつすかたわら、夜は鬼面をつけて幕府要人を血祭りに挙げる暗躍を繰り広げていた。ところが旅の途中での難儀を救ってくれた編み笠侍・露木丈太郎(明智十三郎)に鶴姫がフォーリン・ラブ。丈太郎が徳川サイドの隠密だったことから、恋と使命の間で板ばさみになる鶴姫、だけど守役の藤蔵(丹波哲郎)以下残党たちは許しちゃくれない、すったもんだの末、結局お姫様はお咎めなしだよってことで、残党は全員討死したにもかかわらずハッピーエンドという、“女剣士スタア・宇治みさ子”を楽しむことのみに意義があるといわんばかりのあっけらかんとした作品だった。

さて我等が天っちゃんの役どころは、反体制派の島津藩お抱え侍・蒲生重之進。曲芸一座(=鶴姫一行)を助けた後、のん気に街道をゆく丈太郎(キャラはなんとなくウツイ系)の目の前に、藩をスパイしていた怪しい鳥追い女(天っちゃんと悲劇の怪談カップルになる2年前の若杉嘉津子)を追って刀を振り上げながら飛び出したはいいが、どうみてもただの鳥追いではなさそうな女を庇った丈太郎に対峙され、腕をばっさり斬られ谷底へまっさかさま。実は彼女・お綱は丈太郎と同じく、松平伊豆守(江川宇礼雄)配下の隠密だったのだ。

だがブレイク寸前の天っちゃん(しかも新婚)がそれしきのこと(?)で死ぬはずがない。右腕を失った重之進は同じく打倒・幕府に燃える鶴姫の曲芸一座に用心棒として雇われ、すっかりニヒルが板についた浪人になりきっていた。例のごとく丹波さんに良いように使われつつもにっくきお綱を捕らえると、天井から吊り下げて歪んだ愛情を滲ませながら粘着質に苛め抜く重之進。しかし、さあこれからというときにまたしても丈太郎が現われて対決、「地獄へ行け!」と叫んで自分が地獄へ旅立ってしまうのだった。

*いつものようにどんな役でも一生懸命こなしている天っちゃん(左手一本での殺陣も見事)のおかげで楽しめた、ともいえるが、ベースが単純明快なヒーロー・ヒロインの活劇映画だけに、サブキャラのお綱さんに執着しまくる彼の場違いに濃厚なオーラがかえってストーリーを散漫にしているかのような印象を受けた。せめて責める相手が鶴姫だったら良かったんだが。

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| 映画::新東宝 | 10:51 PM | comments (x) | trackback (x) |
『色競べ五人女』
『色競べ五人女』(1958年・S33)

類まれなる美貌ゆえに女性にモテモテの花形役者・丑之助(和田桂之助)は、嫉妬に狂った男に誤って父を殺され意気消沈。そこへ義母・お袖(山下明子)が言い寄ってきたから大慌て、間の悪いことに番頭に咎められ、もみ合う内に彼を階段から突き落としてしまう。

数年後、出家して日当(=にっとう)と名を改めた彼が身を寄せる延命院に、現場を目撃していた悪党・長十郎(小倉繁)が転がり込んできた。過去をばらされたくなければ云う通りにしろと日当を脅した長十郎改め柳全は、現上人を殺して日当を後釜に据え、彼の容姿目当てに寺を訪れる女性達から金をせしめたり、怪しげな井戸水を売りつけたりする商売を軌道に乗せる。日当の熱狂的サポーターのひとりに大奥で羽振りの良い老女・久米村(荒川さつき)がいることから、お上の権力をもかさにきて延命院はやりたい放題。

そこへ立ち上がったのが、新たに寺社奉行に就任した脇坂淡路守(着物が豪華:天知茂)。正義感溢れる彼は、久米村の遠まわしの脅迫もなんのその、かつて下働きだった熱々カップル・久助(中村竜三郎)とおよし(日比野恵子)の助力を得て、延命院の「秘法」のからくりを見破るのだった。

柳全、久米村は自刃。日当は操り人形だった己を恥じ、からくり仕掛けの蓮の花の上で首を掻き切った。役者時代から恋仲で、いまは久米村の侍女となっていたお梅(北沢典子)もまた彼に寄り添うように蓮華の中に消え、淡路守は「すべては御仏の裁きのままじゃ・・・」と合掌しながら見送った。

*タイトルの「五人」は、お梅・お袖・久米村・およしと、寺を訪ねてきたお袖さんと日当を巡るキャットファイトを繰り広げ二人で井戸に落ちたおむら(三原葉子ねえさん)の5人を指すと思われる。(おとっつぁんの病気平癒祈願に来て、秘密部屋で陵辱され川へ浮かんだおふじちゃん=橘美千子が入るのかどうかは不明)

*珍しく非のうちようがない善人かつエライ人を演じている天っちゃん。久助&およしの災難を機転を利かせて庇ってやったり、久米村のイヤミ攻撃をイヤミで跳ね返したりといった見どころは多少あれど、あまりに出番が真っ当すぎて物足りなかったのも確かだ(贅沢な悩み)。

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| 映画::新東宝 | 10:50 PM | comments (x) | trackback (x) |
『勝利者の復讐』
『勝利者の復讐』(1958年・S33)

タイトルバックからすでに強盗殺人を冷酷に実行中の深沢正夫(タイトルより先に眼元のアップが登場、目立ちまくる天知茂)は、表では国際商事の社長としてふんぞりかえりつつ、裏では再び人相の悪そうな仲間達と宝石店を襲う計画を立てていた。なにしろ彼には、右眉の傷痕までそっくりに整えさせた一卵性双生児の弟・登(名字は「西村」:天知二役)という格好の切り札まである。

おまけに手下のひとり・森田(鮎川浩)の兄貴分で天才的な錠前破りの腕を持つ前島(細川俊夫)が国際商事に入社。ムショ帰りの前島は、美人妻・房江(小畠絹子)と幼い娘のためにも真っ当な職を探すが、世間の冷たい拒絶に遭い、つい森田を頼ってしまったのだ。深沢はさっそく渋る前島を伴って某宝石店へ押し入り、奪うだけ奪った後で店員たちを皆殺しにした。

しかし、逃走途中で前島だけが捕まってしまった。自白を懸念する深沢は、彼の家族の身柄を拘束して口封じを図ろうとする。房江を社長室へ呼び、自慢の銃で散々弄ぶ鬼畜な深沢。だが夫への済まなさと絶望のあまり、房江は一瞬の隙をつき窓から身を投じた。人情派の皆川警部(沼田曜一)の計らいで房江の最期を看取った前島は、沈黙を破って深沢の所業を洗いざらい告白、深沢は警察へ連行された。

ところが彼には、事件当夜だけでなく房江の一件でも鉄壁のアリバイが。彼に扮した弟の登が人目につく場所で別行動をとっていたのである。証拠不十分で不起訴となり勝ち誇る深沢は、裏切り者の前島に復讐を誓う。その前に今まで聞き分けの良かった自分そっくりの弟が「こんな(兄さんの身替りの)役、もうごめんだよお」とぼやき出すが、倉庫へ連れ込みあっさり絞殺、木箱に押し込んでしまった

自分と娘を狙う陰湿な“勝利者(=深沢)の復讐”に対抗するには、深沢を殺人の現行犯で逮捕するしかないと悟り、前島は死を覚悟して彼の呼びかけに応じる。だが抜け目ない深沢は自らの手を汚さず、手下たちに前島の抹殺を命じた。土壇場で森田が前島サイドに付き、内輪で揉めている間に警察が到着。銃撃戦で思わずキレて前島を撃ってしまった深沢は、ニヒルに自殺を試みたものの、前島の決死の一発で銃を弾き飛ばされた。「お前に命を救われるとは皮肉だな」そう呟くと、深沢はヒステリックな笑い声をあげながら連行されていった(前島は一命をとりとめ、皆川警部や娘と歓談してエンドマーク)。

*クレジット上ではいちおう主役は細川さん・小畠さんの二枚看板だが、実は天っちゃん主導のギャング映画。冷酷非道かつスタイリッシュな深沢(兄)と、どこかしらおぼっちゃん気質の登(弟)のギャップが面白い(特に、兄貴に金でカラダを買われたという登クンの従順で素直そうな弟キャラは、ウスイ家の薫兄さんでなくても愛でたくなるラブリーさだ)。そのほか、アブノーマルなキャハハ笑い(by 深沢)というウルトラ・レアなものまでお目にかかれる、かなりのお値打ち作品である。

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| 映画::新東宝 | 10:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
『若き日の啄木 雲は天才である』
『若き日の啄木 雲は天才である』(1954年・S29)

(台本を入手)
かの『東海道四谷怪談』『地獄』を世に生み出した中川信夫監督との最初の出会いを、天っちゃんは『人形佐七捕物帖 妖艶六死美人』(1956年)だと語っていたが(「地獄でヨーイ、ハイ!」参照)、実は端役での出演ながら、その2年前に本作がある。

強烈な個性ゆえに郷里を追われ北海道に向かった石川啄木(岡田英次)は、親友の世話で新聞記者の職を得るが、ここでもまた周囲と衝突し、とうとう東京行きを決意するのだった…という展開を、有名な句を織り交ぜながら映像化した文芸作品で、北海道(釧路)で啄木を出迎える(パシリ扱いの)同僚新聞記者・小松というのが天知茂。三面記事担当の彼と共同で記事を書けと言われた啄木は早速「オレは二面がいい」などとわがままを言うのだが、編集長そして小松クンたち若い連中(松本朝夫氏ら)は尊敬の念を込めて温かく見守ってくれるシチュエーションらしい。セリフはほとんど無いものの、啄木と行動を共にすることがしばしばあり、画面にはけっこう映っているのではないかと期待している。

*対立紙の記者(ヒール)に丹波さん。

*(2007.8.9追記)本編を見た。
天才肌ゆえの傍若無人さが災いして故郷を追われるように去り、親友・宮川(細川俊夫)のいる函館でもうまく行かず、小樽でエラそうさでは五分五分な新聞社の主筆(丹波哲郎)とひと悶着起こした揚句に退社、釧路まで流れてきた石川啄木(岡田英次)。理解ある社長(佐々木孝丸)や同郷の先輩(山形勲)、人のいい芸者・小奴(角梨枝子)たちに囲まれ記者として軌道に乗ったのも束の間、またもや周囲と諍いを起こし、今度こそは真剣に文学に取り組もうと北の地を後にするのだった・・・というストーリーが有名な句を織り交ぜて描かれている。貧乏+姑に耐え忍んでる嫁さんを置き去りにして自分の夢を追い続ける啄木に感情移入しづらいせいで、なんだか必要以上にしんどさを感じる映画である。

初の主演映画『恐怖のカービン銃』の3ヶ月前に封切られているこの作品での天っちゃんの役柄は、釧路新報の小松記者(台本による。残念ながら本編で名前を呼ばれることは無かった)。釧路に着いたばかりの啄木と人力車で新聞社の玄関へ降り立ち、意外に雪が少ないですねえとの啄木の言葉に「ああ、しかし寒いですよ」とインバネスをひるがえしながら社内へ入り主筆に紹介するシーンが初お目見えで、着込んでいるからかもしれないが、新東宝時代の彼にしては体格がまずまず良かったのが印象的。正面きってのアップは一度もないものの、こまごまとしたシーンでさりげなく映っていて、さりげなくセリフを言っている姿を発見するのが楽しかった。

*愛国婦人会主催のかるた大会(啄木の隣には小松記者もいる)の司会進行役として三原葉子ねえさんがちょこっと登場。

*岡田英次さんと天っちゃん、四半世紀あまり経つとエマニエルの美女になるのだなあと思うと実に感慨深い(それを引き合いに出すのはどうか)。

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| 映画::新東宝 | 10:38 PM | comments (x) | trackback (x) |
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