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悪魔の囁き
『悪魔の囁き』 (1955年・S30)

(神保町シアターにて鑑賞)

博物館勤めの平田(中山昭二)は篤志家・大山(上原謙)の幼稚園に勤めるフィアンセの陽子(筑紫あけみ)とラブラブだったが、ある日陽子が何者かに拉致され、彼女の部屋にはイヤホン付きの囁く箱が。無線で指示を出し身代金をせしめる、近頃はやりのハイテク犯罪者・囁く男のターゲットになったらしい。気が弱そうでドジっぽい平田は無事に陽子を取り戻せるのか? 囁く男の意外な正体とは?

見るからにアレな平田の意外なモテ具合と、同じく見るからにアレな刑事(舟橋元)のドタバタあわて加減をほほえましく見守る映画のようだが、こちらは和んではいられない。なにしろ「黒眼鏡の男」(天知茂の役名)を探さねばならないのだ。

冒頭から血眼で黒眼鏡を探していると、陽子さんをさらう、ほんの一瞬だけでてくる奴が眼鏡マスク姿だったのだがいまひとつ決め手に欠け、もしや「黒眼鏡」ってのは「黒ぶち眼鏡」のことなのか?などと捜査範囲を広げかけた頃、囁く男の手下として、先ほど同様ご大層にマスクまでした黒眼鏡たちがわらわらと登場。いったい何の罰ゲームなのか。試されてるのか。

ただその中でも、相対的に小柄で背広がぶかぶかしてる、公衆電話に入って電話で指示を出していた(悲しいことに声は消されていた)眼鏡マスクが一番あやしいのではないか、と推理したのだが、それ以降は出番がなくてあっさりおしまい。同期の松本朝夫さんなんかちゃんと一人で映ってせりふもらってるのになあ。とはいえこれで役名ついてるってすごいことである(あとの黒眼鏡たちの立場はいったい…)。

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| 映画::新東宝 | 11:31 PM | comments (x) | trackback (x) |
神州天馬侠 第一・二部
『神州天馬侠』 第一・二部

第一部 武田伊那丸(1954年・S29)
織田勢に敗れた武田勝頼。寺に預けられ生き延びた二男の伊那丸(藤間城太郎)は、快川国師(市川段四郎)から武田家再興のための埋蔵金の在り処が記された系図と宝刀・三日月丸を託され、加賀見忍剣(細川俊夫)と共に僧正谷へと向かうのだが、途中で野武士の集団に襲われ、忍剣と離れ離れになった挙句に囚われの身となってしまった。

僧正谷の蔦鳥(藤間紫)は伊那丸の身を案じ、呼ばれて心持ちギクシャクと緊張気味にやってきた木隠龍太郎(天知茂)を派遣する。ところが六部に扮した胡散臭くて無口な彼は若君を必死に探す忍剣と反射的にやりあってしまい、その間に伊那丸君は野武士の頭領の娘・咲耶子(川田孝子)にさっさと助けられて馬上の人。
龍太郎「おい、今の馬は伊那丸君ではないのか」
忍剣「アッしまった」


・・・なにやら使えないコンビが誕生して無事伊那丸君と合流したのも束の間、頭領に造反し系図を奪った呂宋兵衛(江川宇禮雄)に追いつかれた一行。呂宋兵衛の妖術に真っ先に倒れた龍太郎は、まともに紹介もされずに伊那丸君(川に落ちて行方知れず)と離れ離れになってしまうのだった…。

*龍太郎初登場の巻。原作ではかなりの剣の達人なので、刀さばきはなかなか美しかったとはいえ、実質何の役にも立っていないところがトホホな若者である(伊那丸クンたち少年少女が強すぎるからなあ)

*唯一カッコいい大人は壮絶な最期を遂げる快川国師。

第二部 幻術百鬼(1955年・S30)
呂宋兵衛の妖術からやっと立ち直ったものの、敵に背後から圧し掛かられて倒れたり崖から落ちたりやっぱり使えない味方サイド(主に龍太郎)をよそに、川に流された伊那丸君は竹童くん(佐藤信)操る怪鳥クロに助けられて無事だった(そして龍太郎は何食わぬ顔で味方の一行に加わり伊那丸君と合流)。

龍太郎(と竹童くん)だけでは心もとないと思ったに違いない蔦鳥姐さんは、妖術を無効にする笛を奏でる小鷺ちゃん(小園蓉子)を追加派遣、一時は呂宋兵衛を捕えたかにみえたがあいにく別人。奪われた系図を取り戻すため「斬りこんでしまえば、我らいささかの遅れもとりませぬ!」と切れ者発言をして(by 龍太郎)敵の牙城に乗り込む一行だったが、水責めにあって系図どころかもうひとつの重要アイテム・宝刀三日月丸まで奪われてしまう。大ピンチ!というところで終了。

*そして龍太郎はここといって見せどころのないまま第三部へ。

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| 映画::新東宝 | 11:30 PM | comments (x) | trackback (x) |
『いも侍・蟹右衛門』
『いも侍・蟹右衛門』(1964年・S39:松竹)

道場破りの浪人集団とのいざこざ、ひょんなことから預かった坊やとの触れ合い、宿を提供してくれたお嬢さんやスリの姐さんとの友情以上恋未満、などを経ながら従兄弟の道場へ向かう、おっとり型だが実はめっぽう腕の立つ“いも侍”こと泡島蟹右衛門(長門勇)の図らずも武勇伝になってしもうたがなもし、なお話。

冒頭から狼藉を働き放題の浪人集団(江見俊太郎さん等)の中でただ一人、ニヒルかつクールにたたずむ淵上甚兵衛(天知茂)は、かつて道場の師範代にと見込まれ、道場主・夏目玄々斎(龍崎一郎)のお嬢さん(小畠絹子)ともいずれ…という出世コースを辿っていたにも関わらず、星野金次郎(宗方勝巳)との試合において玄々斎先生から「お前の剣は邪剣だ!」と言われ道場を破門されてしまった男。金次郎にすべてをかっさらわれた彼は剣の鬼となり、浪人集団のリーダー格で多少は良識ありそうな大垣惣左衛門(堀雄二)の元へ身を寄せていたのである。

ふざけた男のくせに剣の腕はキレる蟹右衛門の従兄弟というのが憎き金次郎である事実を偶然知った甚兵衛は、リベンジを果たすために単身で道場へ出向き、病気療養中の玄々斎をその邪剣(「無宿侍」チックな逆手斬りの構え)で打ち破ると、金次郎に果たし状を突き付ける。

義父の仇、と受けて立った金次郎と対峙する甚兵衛。助っ人に来た蟹右衛門が浪人たちのせいで足止めくらっている間に死闘を繰り広げた結果、金次郎の利き腕を傷つけ勝利を確信した甚兵衛は、止めを刺すことなく剣を下ろした。これで思い残すことがなくなった彼は、最後に蟹右衛門(浪人全員撃退済み)と刀を交えることを選択して果てるのだった。

邪剣とくれば天知茂なのか(むしろ邪眼?)、『剣に賭ける』っぽい役柄で、トメ位置で松竹映画に返り咲いた第1作。2作目の『抜き打ち御免』よりずいぶん人物の心理描写まで掘り下げられていて見ごたえがあった。

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| 映画::松竹・他 | 01:28 PM | comments (x) | trackback (x) |
『座頭市の歌が聞える』
『座頭市の歌が聞える』(1966年・S41)

「先生、お願いします」あまり多くなさそうな前金を受け取って旅姿の男(実はいかさま博打がばれて逃亡中)を斬り捨てた浪人・黒部玄八郎(天知茂)。瀕死の男をなぶりものにする連中には目もくれず、前から来た殺人オーラぷんぷんの座頭(勝新太郎)をも黙ってスルーした黒部は、とある町でようやくお蝶という名の女(小川真由美)を宿場の女郎屋で捜し当てた。

彼女の本名はおしの。飲み屋にいた頃に玄八郎と所帯を持ったらしいのだが、酒癖が悪かった彼の自堕落な暮らしが原因で、今は女郎に身を落とし宿場を転々としていた。その彼女を3年ものあいだ捜し続け、ようやく再会を果たした玄八郎はよりを戻そうと言うのだが、今のあんたには武士の心の欠片もない、と冷たく追い払われてしまった。

それでも諦めきれない玄八郎は、身請け金五十両の調達のために、最近町を牛耳り始めた板鼻の権造(佐藤慶)に自らを売り込む。権造が持ちかけたのは、ショバ代回収の邪魔をする居合いのあんま・座頭市を斬ることだった。さっそく斬りに向かう玄八郎。だが市と一緒にいた琵琶法師(浜村純)の音色に圧されてか、その場は立ち去る(仕込みではなく単なる杖しか持っていなくて内心びびっていた市もひと安心)。

その後ショバ代取り立てで再びひと悶着あり、人一倍敏感な聴覚を祭りの太鼓で撹乱するというクレバーな策を思いついた権造に苦戦するものの連中を蹴散らした市の前に、真打ち(=玄八郎)が現れた。お蝶との経緯を知っているだけになんとか穏便に済ませたそうな市に対しあくまで対決を望んだ結果、主役には勝てるはずもなく散って行った玄八郎。市は黙って、かつてお蝶から貰ったかんざしを骸の上に置いてやるのだった。

(それから権造一家で大暴れした市、ショバ代だけでなくお蝶の身請け金まで受け取ると、玄八郎からだと言って女郎屋に置いてきてエンド)。

*市っつぁんのやさぐれ度も円熟味を増している座頭市シリーズ13作目。冒頭から切れ味鋭い殺陣とクールな風貌をカラーで拝める眼福作品、なのだが、どうしても1作目の平手先生と比べてしまうのでちと分が悪い。前作のように市との友情を育む訳ではないくせに、そこはかとなく善い人的挙動が垣間見える(贔屓目?)せいなのか、“昔は相当ワルくて女房売り飛ばしちゃいました、いまじゃ金のために人斬ってます”な落ちぶれ浪人の殺伐さが消えてしまって、立ち位置が中途半端になっていた気がする。ラストの対決も、市のやる気の無さからすると避けようと思えば避けられた感じがするし、そして何がなんでも身請け金が欲しいんだ、という切羽詰まった必死さが表面に出ないので、たいしたカタルシスもなく終わってしまったような…でもまあカッコいいから許す(特にこの年代)。

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| 映画::大映with勝新太郎 | 11:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
『神州天馬侠』第三・四部
『神州天馬侠』第三・四部(1955年・S30)

第三部 火ごま水ごま
呂宋兵衛(るそんべえ:江川宇禮雄)たちの罠にかかり、武田家再興のための大事なお宝のひとつ、短刀・三日月丸を奪われてしまった伊那丸(藤間城太郎)一行(咲耶子:川田孝子、忍剣:細川俊夫、木隠龍太郎:天知茂)は、冒頭からいきなり水責めの憂き目に。何か策は無いのか、忍法は使えんのか龍太郎!(使えません)とやきもきしていると、頼もしい蔦鳥(藤間紫)姉さんが現れて事なきを得る。

しかし、もう一つのお宝、系図の巻物は、伊那丸サイドの竹童くんと敵方の蛾次郎くん、ふたりの大鷲クロ争奪戦の合間に第三者の手に渡ってしまった。泥棒市まで辿ったものの、大事な巻物は既に謎の旅僧3人に買われた後。彼らを追う伊那丸たちは、同じく巻物を追いかける呂宋兵衛たちと鉢合わせそうになるが、団扇太鼓を打ち鳴らす謎の集団(ボス・辰巳柳太郎!)に遮られるのだった(つづく)

*側にひっそり控えているだけで(一行での移動時はいつもしんがり)アップも台詞もごく僅かな龍太郎(僅かなアップはこちら)。力仕事や伊那丸くんの心身サポートは主に忍剣、忍術合戦は蔦鳥姉さんの独壇場なので、何の要員なんだかいまいち不明な使われ方だった。

*海賊たちが「南蛮おどり」(by 二葉あき子)を歌い踊るシーンがとっても新東宝らしかった。

第四部 天動地変
巻物を持った旅僧を襲う呂宋兵衛たち。だが再び団扇太鼓集団が現れ、伊那丸一行も交えて乱闘に。ここでやっと剣の達人たる活躍を垣間見せてくれる龍太郎だが、ひと言の台詞もないのにやたらと存在感を振りまいて死んでしまった厳徹 (辰巳柳太郎)の前ですっかり霞んでしまう。

旅僧の正体は伊那丸の父・勝頼(尾上九朗右衛門)だった。ところが無事に巻物が手元に戻った頃、留守番をしていた咲耶子ちゃんが攫われてしまい、呂宋兵衛たちから巻物との交換条件を持ちかけられる。単身で敵地に向かったのはなんと龍太郎(最大の見せ場だが、ラーメン柄の着物が気になる)。巻物を手渡した途端、咲耶子ちゃんが蚕婆(武智豊子)に変身、わらわらと現れる手勢。危うし龍太郎!でも美味しい場面じゃないか、と思っていたら伊那丸と忍剣も助太刀に現れた(残念)。それでも腰の据わった殺陣で2番手ボスを一騎打ちの末に倒して役目を果たすのだった。(あとは再びひっそり組)

*今までの稽古の成果が出ているような気合いの入った殺陣が拝めて満足。でもこの後、またしばらく「仕出し」に戻っちゃうのが残念である。ラーメン柄が悪かったのか?(違う)

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| 映画::新東宝 | 11:10 PM | comments (x) | trackback (x) |
『検事とその妹』
『検事とその妹』(1956年・S31)

(台本を入手)

苦学して検事になった矢島健作(丹波哲郎)は、自分を支え続けてくれた妹の明子(日比野恵子)の幸せだけを願っていた。そんな彼女が近々結婚することになり、兄貴としては嬉しさ半分、寂しさ半分の複雑な心境だ。

フィアンセは健作の学友の弟で芝野秀雄(天知茂)、県河川係長26歳。4シーン目あたりから、明子の腕をとって自動車に乗せて料亭へ、という流れになり、新居の設計図を拡げながら「ハハハ…」と嬉しそうに細かい間取りを決める秀雄、「こっちにいらっしゃい」と明子を隣の席に誘おうとしてモジモジされると「明子さんは純情なんだなあ、ハハハ」とそれきっと胡散臭いんだろうなと想像したくなる笑い声を何度もあげて盛り上がっている男である。

しかしその秀雄が、土木工事で賄賂を貰っていたことが判明する。妹のために揉み消そうかとも考えるが、死人まで出た重い事件ゆえ苦悩しながら正義を貫くことを決心する健作。そして事件を知った実の兄貴(中村彰)から馬鹿モン!と怒鳴られた秀雄は
「…す、すみません(泣きかけて)ぼ、僕あ、出来るだけ早くあの人を仕合わせにしたかったんです…」
うなだれてポロッポロッと泪を落とすのであった。

このあと取調室で義理の兄貴(予定=健作)から「名前は?」と尋問されるシーンがあるが、物語のメインは健作が担当する別口の姉弟愛(筑紫あけみ&北原隆)事件なので、秀雄はそのままフェードアウトしてしまうようである。そして刑に服すことになる秀雄を3年でも5年でも待つわ、とけなげに誓う明子に「そうか。少し弱かったけど、秀雄君もほんとうはいい人間だからなあ」と健作が励ましておしまい。

*悪人ではないがヘタレ度が高そうな秀雄くん。丹波さんの取り調べにびびっている図など見てみたいものである。

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| 映画::新東宝 | 11:09 PM | comments (x) | trackback (x) |
女は復讐する
あっさり脱ぎすぎた川口小枝
圧倒された相手役・天知茂の反省

松竹映画『女は復讐する』で武智鉄二の娘・川口小枝(さえだ)が題名通り男に復讐する主人公役で二度目の映画出演をしている。

前作『白昼の通り魔』で、暴行シーンを大胆にやってのけた女優という彼女の知名度を、会社が買っての配役だったが、結果は失敗に終わったようだ。

天知茂は今度の相手役だが、この作品は彼が設立した「A&Aプロモーション」の初の企画作品(テアトル・プロ及び松竹と提携)でもある。その天知も川口起用の失敗を反省している。
「撮影第1日からのベッド・シーンにぜんぜん臆することなく、ごく自然に裸になり、濃厚な場面にとりくんで来たのには感心しました」
と彼女の女優根性を認めながらも、
「しかし、愛欲場面に、あれほどこだわらずに入れるのは、まったくのおぼこ娘か、男を知りすぎた女ということになりますね。この作品の女主人公は、男は知っているものの、男の味を知りつくしたという女ではないのです。策を抱いて男に身をまかせるのですが、そこには男に対する恥じらいや抵抗感が表現されなくてはいけないわけです。その点で不満が残りますね」

試写の後、こう批判したが、「でも演技をしている間は、そんなことを観察分析しているゆとりはありませんでした」というから、圧倒されていたのはベテラン天知のほうということ。

(以上、週刊現代 1966・S41年10月27日号より引用 *資料提供:naveraさん)

男泣かせる超グラマー
「女は復讐する」のヒロイン 川口小枝
とまどう原作者笹沢氏 天知、長谷監督も驚く

松竹「女は復讐する」(監督長谷和夫、テアトルプロダクション・A&Aプロモーション製作)に出演中の川口小枝。「白昼の通り魔」につづいて二度目の映画出演だが、本人もいうとおり「わたしは女優じゃありません」―身分は女子大生(共立女子大文芸学部2年)だが、こんどの映画出演をめぐって3人の男が泣いている。彼女のつかみどころのない“女”のために―。

“憂愁夫人”には程遠い
原作と違ったイメージだが素質を生かす

まず真っ先に泣いたのは原作者の推理作家笹沢佐保氏。映画の原作は7年前に氏が書いた「空白の起点」だが、保険金をめぐる殺人事件の犯人が実は「“憂愁”の影を持った」若い女性という推理小説。「これはサスペンス・メロドラマ」(共演の天知茂)「原作は単なるナゾ解き小説じゃなく、ロマンがある」(長谷監督)というように、主人公はあくまでもやせ型の影を持つ“憂愁”を帯びた女のはずだった。ところがこの女を演ずる川口は、バスト99、ウエスト65、ヒップ98、体重57キロという超グラマーである。メロドラマとはほど遠い女だ。笹沢氏の好みの女のタイプは、やせて影を持った女という評判どおり、氏の作品の女主人公はすべてこのタイプだ。「原作と映画化は別物」とは常識論だが、あまりにもイメージとかけ離れた主役の出現には笹沢氏もアッケに取られ「仕方がないですな」とあきらめている。

次にびっくりしたのは共演の天知茂氏。彼が驚いたのもムリはない。この映画の企画提出者はもともとA&Aプロの主宰者であるこの天知だったからだ。彼にとっては、ことしA&Aプロを作ってから第1作の映画企画。笹沢氏の小説が好きで、この原作の発表当時から映画化をねらっていた。いわば念願の映画化である。
「1プロダクションが映画を作るというのはたいへんな苦労がいるものです。配給元から主演女優を指定されれば、ぜいたくな注文はつけられない。配給会社だって商売になるように女優を選んだのですから」と、イメージの違いには、商売になる映画を、ということで“妥協点”を見出している。

苦労しているのは、この映画の全責任を負った長谷監督も同じである。外注作品の常として、極度に制限された製作費とスケジュール。川口が決まったのも撮影日程がギリギリになって、これ以上延びれば封切りに間に合わないというときだ。
「台本にも“憂愁夫人”と形容されているように、たしかにイメージは違います。からだはごらんのとおり。セリフはまだまだ甘くて舌足らず。でもね」と語る長谷監督のことばは、せっぱつまって登場した主演女優のイメージの違いにはとまどいながらも、立場上、川口を弁護する。
「川口君という女は、いつか突然大女優になるといった可能性を持った女だと思う。僕の役目はその可能性を引き出して、見て損はしない映画にすることです。川口君の持っている素材を生かして、原作とは逆のイメージを使ってもおもしろい」
逆のイメージとは「せっぱつまった女の生き方」(長谷監督)だそうだが、こういう抽象的なことばを使うところに長谷監督の“とまどい”が表れているようだ。

ところで3人の大の男をあわてさせている当の川口小枝のことばを最後に紹介しておこう。
「出演交渉のあったとき、おとうさん(武智鉄二氏)に相談したら、“普通のメロドラマならダメだが、こういうヒロインなら出てもよい”といわれたので出ることにしたの。楽しいわよ、この仕事は」
“こういうヒロイン”とは養父に犯され、養父を殺す殺人犯である。

(写真キャプション)
・イメージの違いに、びっくりしている原作者の笹沢氏と主役の川口と天知(ロケ現場の神奈川県・舞鶴で)
・父親に許されて上半身もあらわにベッド・シーンを展開する川口と天知(*抱き合いながらきょとんとしてる天っちゃん。たぶん撮影指示待ちか)

(以上、デイリー 1966・S41年9月30日号より引用 *資料提供:naveraさん)

*初の企画映画だというのに、未だにお目にかかる機会がない幻の作品(2010年6月現在)。先日、原作を読んでみたところ、「冬の曇り空」と称されるような、とある暗い過去ゆえに翳を背負う主人公・新田が“自分と同じ翳を持つ”部分に惹かれるその該当女性が、葉子ねえさんもビックリなダイナマイト・ボディーの物怖じしない小枝チャンに変わっているわけだから戸惑うのは無理はないと思った(週刊現代での天っちゃんのコメントが大いに頷ける)。…しかし原作では彼女とはベッド・インしないんだけど、やっちゃったのか? それともまた(「新宿25時」のように)宣伝だけなのか? そのあたりも含めて気になる作品である。

*(2011.6.20追記)映画をようやく鑑賞できた。

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| 映画::松竹・他 | 12:05 AM | comments (x) | trackback (x) |
『肉体女優殺し 五人の犯罪者』
『肉体女優殺し 五人の犯罪者』(1957年・S32)

ロック座で殺人事件――。何者かがすり替えた新聞の予告広告通り、踊り子の千鳥(北令子)が舞台上で射殺された。ベティ(三原葉子)が撃った小道具のピストルが本物にすりかえられていたのだ。なさぬ仲だった千鳥の夫の徳島(大江満彦)が逮捕されるが、兄の無実を信じる妹・かほる(三ツ矢歌子)の懇願に、新聞記者の西村(宇津井健)は一肌脱ぐことを決意する。

千鳥が麻薬常習者だったことから、ヤク絡みの事件ではないかと見当をつける西村。ところが、鍵を握っていそうなベティが舞台から転落死してしまい、ロック座にヤクを流していた船上便利屋の森元(御木本伸介)も水死体で見つかった。

そんな中、殺人現場や西村の行く先々に胡散臭くうろちょろする黒ぶち眼鏡の貧相な男がいた。ロック座の振付師・天野(天知茂)である。かほるに偏執的かつ変質的なダンス・レッスン(「ワン・ツー・スリー・フォー!ダウン・アップ・ダウン・アップ!ほら、もっと回した回した! フラフラしない!(延々と続く)」)を施して当然のごとくフラフラしたところを押し倒す(が、フラフラのかほるに一旦押し戻されかけるあたりの華奢さも見逃せない)この天野、ヒーロー然と現れた西村に「君はどこかが狂っている。これ以上自分で自分の運命を狂わせないほうが賢明だ」とヒーロー然とした説教(どこかどころじゃない狂い方ですが西村さん)をパンチと共に喰らっても「狂ってんのは今の世の中さ。俺が知ったことじゃない」とニヒルに言い放つ大型悪人ぶりを見せつけるほか、いかにも怪しい奴でございな言動と悪人笑顔(画像参照)を撒き散らして期待させてくれるのだが、クライマックス間近で再びかほるちゃんを襲っているところをラスボス・関根(林寛)に撃たれてしまい、未練たっぷりに悶えながらもあえなく絶命。結局、ちょっと変態気味のパシリでしかなかったらしい。

*聞きしに勝る「ワン・ツー!」のインパクトだった。

*「犯罪者5人」って誰だろう。ラスボスの関根、パシリの天野と道化のハチノキ(小倉繁)、ベティ姐さん、森元?(ベティ姐さんは「肉体女優」も兼ねてる?)

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『早射ち犬』
『早射ち犬』(1967年・S42)

東京で流しのギター弾きをしている鴨井(田宮二郎)は、シマを張る元・極道の九十九会の連中とやりあううち、姉を捜すエミ(嘉手納清美)の姉・文子(江波杏子)が九十九会にいることを偶然知るのだが、九十九会のナンバー2・原(成田三樹夫)は知らぬ存ぜぬを決め込んだ。

そんな折、アパート隣室に住んでいる、臨月の妻・玉子(坂本スミ子)を抱える白タク運転手・五郎(小沢昭一)が関西までの高額ドライブにありつき出発。ところが帰りに車は炎上、客の丸焦げ死体が見つかって五郎が指名手配された、との知らせが上京してきたしょぼくれ刑事・木村(天知茂)によってもたらされる。客とは九十九会の会長・白井金造(伊達三郎)で、原が本人と断定するのだが、鴨井には五郎が犯人とは思えない。

鴨井は家に戻ってくるであろう五郎を張り込む件を了承。身重の玉子にショックを与えぬよう、ひと芝居打つ鴨井と(打たされる)しょぼくれ。だが記者たちが押し掛けてきたことでしょぼくれは玉子に事実を告げた(動揺する玉子に動揺した鴨井のしょぼくれへの名言「こんなに気持ちが動いたら流産してまうやないか、もし流産してみい、お前がかわりに赤ん坊産めよ!」)。

ふてくされた鴨井の代わりに彼のアパートで張り込むしょぼくれは、実は白井の情婦で、麻薬に侵されている文子との面会を親切にもおぜん立て。鴨井は文子に会うが、何者かに射殺されてしまった。今わの際に彼女に渡されたドリンク瓶には強力な麻薬が――それは、アパート隣人のヒッジョーに怪しいオカマ男・咲田(財津一郎)も入っているらしい新興宗教の天心精霊会製のものだった。

その頃、五郎は追われつつアパート近くにたどり着いた。彼は白井に騙され、犯人に仕立て上げられたのだ。死んだのは白井の木偶人形だった天心精霊会の会長。その事実を鴨井に告げようとする五郎だが、九十九会の連中に拉致されてしまう。呼び出しを受けた鴨井はしょぼくれの手足に手錠をかけて敵地へ赴き、得意の早射ちで颯爽と一網打尽、無事五郎を救出して、白井のいる天心精霊会へ乗り込んだ。しょぼくれも駆け付けて会長のふりをしていた白井を逮捕、咲田は麻薬Gメンだったことも判明して一件落着。玉子の出産も無事に済んだ。

「鴨井…達者でな」「お前もいつまでも貧乏刑事しとらんと、少しは出世したらどうや」大阪へ戻るというしょぼくれの餞別に、2本のタバコに火を付け、1本を後ろを向いたままぐいっと差し出す鴨井。だが振り向くと、しょぼくれは既に歩み去っていた――。

*鴨井、東京出稼ぎ編。画面上からこてこて感が薄れたような気がするが、ダジャレ満載の台詞は絶好調(財津さんも絶好調)。そして、相変わらずじゃれ合いながらもクールな距離は保つ二人の関係が集約されているようなラストが素晴らしい。

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| 映画::大映with田宮二郎 | 11:51 PM | comments (x) | trackback (x) |
『続・鉄砲犬』
『続・鉄砲犬』(1966年・S41)

密輸品の奪い合いによる銃撃戦で警羅隊長が殉死、しょぼくれこと木村刑事(天知茂)も右腕を負傷した。彼を見舞って仔細を聞いた鴨井(田宮二郎)は、偶然バーで知り合った京子(久保菜穂子)に請われるまま、彼女の“パパ”・秋津(河津清三郎)の古美術を東京へ輸送する際の用心棒を買って出たのだが、実は古美術とは真っ赤なウソ、秋津は冒頭の事件に関わる密輸組織のボスで、京子は彼の情婦だった。

ふてくされた鴨井は、秋津の次の誘い(=人殺し)をきっぱり断るが、思いつめた表情でホテルまで追ってきた秋津の秘書・雪枝(渚まゆみ)が鴨井の就寝中に何者かに絞殺された。彼女が敵対する多々良(杉田康)サイドに内通していることに感づいた秋津の差し金である。通報したものの第一容疑者として尋問を受ける羽目になった彼の窮地を救ったのは、上京してストリッパーになっていた馴染みの玉子(坂本スミ子)としょぼくれ。しかし、雪枝の恋人で多々良の下っ端・荘吉(高見国一)は、鴨井が殺したと唆されたせいで彼を付け狙う。

ファッションモデルになった、という虚言を真に受けこちらに来るという母親を誤魔化したい玉子に協力してやることになった鴨井は、多々良を取り込んだ秋津に売られかけて泣きついてきた京子を匿う見返りとして、玉子用のマンションを彼女に用意させた。ところが、病気の母親の代わりにやってきた玉子の弟はなんと荘吉。鴨井の言葉で改心した荘吉は、雪枝殺しの黒幕を暴くために協力を申し出るのだが、秋津は彼を拉致、京子との交換を鴨井に持ちかけた。荘吉も京子も見捨てない、と電話口で言い切った鴨井の姿に、京子は自ら秋津の元へ戻り、荘吉の命を間一髪で救った。

鴨井は銃撃戦の末(弾切れ寸前のピンチにパトカーで駆け付けたしょぼくれのお蔭もあって)秋津たちを倒したが、京子は命を落とした。後日、“モデル”の玉子と“サラリーマン”の荘吉を(知らぬ顔をしてくれたしょぼくれと共に)見送った鴨井は、京子の遺骨を故郷・青森へと送り届けるため、旅に出るのだった。

*『鉄砲犬』の次だがストーリーは続編ではない。いきなり撃たれて負傷したしょぼくれ刑事、包帯姿で捜査を続行、ボス・秋津や雪枝殺しの真犯人(前回同様の殺し屋役・守田学)の胡散臭さに眉間を鋭くするシーンや、“独り言”で情報を漏らすなど相変わらずの鴨井贔屓なシーンもあるが、出番は心もち少なめ。新東宝同期の久保さんとは顔合わせがほとんど(全く?)なかったのは残念だった。

*(右腕吊ってるので)左手でお箸を持ってうどんを食べていたしょぼくれは凄いと思った。

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| 映画::大映with田宮二郎 | 11:50 PM | comments (x) | trackback (x) |
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